ワンストップでシニアの起業をサポート
今でこそ年金支給年齢の引き上げなどで、定年後の働き方やシニア起業が注目されているが、当時はまだそうしたニーズが顕在化していなかった。行政の窓口で、「老後にまで働きたい人がいるとは思えない」と言われたこともある。
しかし実際には、当時すでに60歳以上の起業が増加(上記グラフ参照)。若者の起業や起業希望者が減少していく一方、シニアの起業熱は年々高まり、2012年には新しく起業した全世代のうち、60歳以上が最も高い割合となった。
片桐氏はまず、起業コンサルティングと会社設立の事務サポート、起業家交流会の運営を柱に事業をスタート。そこで起業を志す多くのシニアに出会い、起業の際のサポートニーズやシニア特有の悩みのひとつひとつに向き合い、ノウハウを蓄積していった。
また、起業仲間同士、情報交換や切磋琢磨し合える空間を提供したい、という願いから、2010年にはレンタルオフィス事業にも着手。起業前の相談や手続き事務だけでなく、起業後もレンタルオフィスを提供したり、販路拡大や集客支援等のコンサルティングなどの個別相談にも応じたりと、起業にまつわる様々なサポートをトータルで提供できる体制を整えたのだ。
このワンストップのサービスに多くの起業家からの支持が集まり、これまでの累計相談件数は6000件、過去700人以上のシニア起業をサポートしてきた。現在では、銀座、東京、新宿、横浜の4拠点6店舗のレンタルオフィスを運営し、利用会員は約170社。これまで70回以上開催する起業家交流会にも、毎回100名超の起業家・起業予定者が参加し、盛り上がりを見せている。
「交流会の参加者のうち3割くらいはリピーターですが、残り7割は新規や不定期の参加者です。前半に20社のPRタイムを設けているので、プレゼンテーションの訓練にもなりますし、後半2時間の交流タイムはビジネスマッチングや情報収集の貴重な場として活用されています」
定年後の選択肢に起業を
定年前後の起業希望者に意外と多いのが「どんな事業をしたらよいのかわからない」という悩み。通常の起業セミナーであれば、まずはやりたいことを見つけてから、と門前払いかもしれないが、片桐氏は違った。
起業希望者のこれまでの経験を棚卸しし、得意なこと、やりたいことをひとつひとつ洗い出す「自己分析」の段階からサポート。SWOT分析(外部環境や内部環境を強み、弱み、機会、脅威の4つのカテゴリーで分析し戦略をたてること)などの分析手法を用いて、アイデアを具体的なビジネスプランに落とし込むためのセミナーなどにも力を入れている。
「確かに若者の起業家であれば、やりたいことが明確になってから起業を考えたほうがよいでしょう。でもシニアの場合は、長い会社員生活で培った経験から、強みやビジネスアイデアを必ず掘り起こすことができます。また、まずはローリスクで始め、顧客ニーズに対応して事業内容を変えていき、最終的に天職にたどりつく人もいます。〝起業したいが、やりたいことがわからない〟という悩みに、最初は戸惑いましたが、今ではそうした潜在的な起業ニーズをすくいあげることが、私の使命だと感じています。一昨年から改正高年齢者雇用安定法が施行され、定年後の再雇用を選択する人も増えると思いますが、定年後の働き方として起業を選択するメリットは大きい。身の丈に合った起業で、社会と関わりながらいきいきと働き続けられる〝起業〟を選択するシニアが増えれば、現役世代にとって、とても心強いお手本になると思うんです」
(記事提供: 投資家ネット『ジャパニーズ インベスター』 )
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