何とか深夜営業店を増やし、業績をテコ入れしようと、深夜に店員1人で切り盛りする「ワンオペ」を廃止。複数人員を確保できた店舗から順次、営業を再開する方式に切り替えた。

さらに、従来はすべてを本社で管理していたすき家事業について、全国7エリアの事業会社に分社化。アルバイトの採用権限なども地方に委譲したことでゼンショーHDの金子武美取締役は「地域に根付いた採用をスムーズに行えるようになった」という。これにより、すき家では9月末までに、全店で、複数のバイト人員を確保して深夜営業を再開する計画としている。

その最中ですき家にとって想定外だったのが“バイトテロ”の続出だ。ネットを中心に悪意ある行為が広がり、求職中の大学生やフリーターらのイメージが悪化、すき家をはなからバイトの選択肢から外す可能性が出てきたからだ。

金子取締役は9月末に再開するスケジュールは「動いていない」と豪語した。だが、ただでさえ外食のバイトは長時間の立ち仕事が多く敬遠されがちで、人手不足にも悩まされている。

想定通りに人を集めるには、地域の平均より時給を上げるしかない。そうなれば、人件費が高まることになり、利益を圧迫、業績の下押し圧力になる構図というわけだ。


暇なバイトが増えるとバイトテロも増加?

ゼンショーHDの16年3月期は営業利益で4・8倍の122億円と大幅改善を見込む。最大の要因は、すき家事業の改善だ。同社によれば、深夜営業の全店再開で、営業利益で39億円の押し上げ効果を見込んでいるという。だが、それは、今の人件費見込みの範疇の時給内でバイトが集められ、営業が再開できるという前提での試算の下という“条件”付きだ。

今後、人手を集めるために、時給をさらに高くせざるを得なくなれば人件費が膨らみ、利益は着実に削られていく。なお一層悪いのは、時給を上げても人手が集まらず、すき家の深夜営業そのものが計画通りに再開できないことで、その分だけ、業績を押し下げる要因になる。

肝心の客入りも芳しくない。すき家の既存店客数は4月まで10カ月連続でマイナス。4月15日から牛丼並盛の税込み価格を291円から350円に値上げしたことで、価格に敏感なサラリーマンが敬遠、客数の減少には拍車が掛かっている。客数が減り、店の活気は失われ、暇な状態のバイトが増えるようだと、また、いつバイトテロに見舞われてもおかしくない。

今後、どのような対策を打っても、悪意のある行為は止められない。ゼンショーHDは「何度も、口を酸っぱく『店内で職務以外の行為は行わない』と言い続けるしかない」という。店長を中心とした全国各地での地道な取り組みがバイトテロを防ぐカギで、同社業績の行方も左右することになりそうだ。

(この記事は6月23日号「 経済界 」 に掲載されたものです。)

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