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(写真=PIXTA)

◆昨日は、週末のギリシャの資本規制導入発表とデフォルトリスクの高まりを受けた市場のリスク回避的な動きから、米利回りの大幅低下と共にドルが下落傾向となり、ドル/円が一時122.11円へ下落、円は全面高となっている。

◆対ドルでの上昇率は円が一位、次いでフランとなった。スイス中銀はフラン高阻止でフラン売り介入を実施したことを確認した。他方、先般黒田総裁がこれ以上の円安を追求しない姿勢を示したことで、円の避難通貨としての性格が相対的に強まりつつある。

◆中東欧通貨への影響が大きく、ロシアルーブル、トルコリラ、南アランドの下落が大きかった一方、ポーランドズロチやハンガリーフォリントの下落は一時的に留まった。

◆他方、ユーロは、ギリシャのデフォルトリスクにも拘らず、米利回りの低下が大きかったことからドル安の影響を強く受けたかたちで、早朝に急落した後、急反発し先週末の水準である1.12ドルを回復した。対円や対スイスフランではユーロ安だが、下落幅は小幅に留まった。

◆本日は、ギリシャの対IMF債務返済および第二次支援交渉の期限到来、英1QGDP確報値、ユーロ圏6月HICP、米4月S&Pケースシラー住宅価格および6月シカゴPMIなどが発表予定となっている。

◆ギリシャのデフォルトはほぼ確実だが昨日から既に織り込んできており、本日も株安・欧米金利低下が続くかが焦点となる。株安・米金利の低下が続くようだと、ドル/円は122円割れの可能性もある。市場が沈静化すれば持ち直すとみられるが、7月2日の米雇用統計、5日のギリシャ国民投票を控えて積極的なポジションテイクは控えられそうだ。ドル/円は122円台半ばでのもみ合いとなりそうだ。


昨日までの世界:ユーロ/ドルが急回復

ドル/円は、ギリシャのデフォルトリスクの高まりを受けて週末の124円丁度近辺から東京時間早朝に一時122.11円へ急落した。その後、東京時間にはドル押し目買いの動きからか123円台を回復する局面も見られ、欧州時間は米中長期債利回りが一旦急落後に反発基調となったことも、下支え要因となった。

もっとも、NY時間は、米株価の下落が収まらない中で米中長期債利回りが反落したことから上値の重い展開となり、122円台半ばで引けている。

ユーロ/ドルも、ギリシャのデフォルトリスクの高まりを受けて早朝に1.11ドル台後半から一時1.0955ドルへ急落して始まった。欧州時間入りにはギリシャ国債利回りが急上昇の一方、ドイツ10年債利回りは急低下し、またスペインやイタリア国債利回り上昇にも波及が見られた。

もっとも、欧州時間入り後にはじりじりと反発に向かい、一時1.1278ドルと先週末の水準を上回って引けた。ユーロに特段の買い材料は出ていないが、ドイツよりも米利回りの下落の方が大きかったことから、金利差の観点からはユーロ買いドル安だった面がある。

ユーロ/円も、早朝にドル/円とユーロ/ドルが共に大幅下落したことから、138円台前半から一時133.78円へ急落した。もっとも、その後はユーロ/ドルの反発と共に一時138円台を回復、結局137円台半ばで引けている。

豪ドル/米ドルも、ギリシャ問題を受けて早朝に0.76ドル台半ばから一時0.7587ドルへ下落して始まった。もっとも、下落幅は非常に限定的だったほか、その後アジア時間中に先週末の水準を回復、むしろ米ドル安の影響を受けて0.77ドル台へ続伸した。

豪ドル/円は、早朝に94円台後半から一時92.68円へ急落したが、その後の豪ドル/米ドルの反発基調を受けて94円台を回復して引けている。


きょうの高慢な偏見:株・金利睨み

ドル/円は、ギリシャのデフォルトを受けて株安・米金利の低下が続くようだと、122円割れの可能性もある。市場が沈静化すれば123円方向の動きもあるが、7月2日の米雇用統計、5日のギリシャ国民投票を控えて積極的なポジションテイクは控えられそうだ。

なお、米経済指標では米4月S&Pケースシラー住宅価格および6月シカゴPMIが発表予定となっているが、足許の株安を受けて今後各種センチメント指標が悪化する可能性が高い中で、シカゴPMIが多少改善してもドル買いでの反応は限定的となりそうだ。

ユーロ/ドルは、ギリシャを材料に売っていいのか、買っていいのか不明確で、諸説紛糾している。最近の動きによれば、米利回りとドルの動向の影響を受け易いことから、米利回り動向を睨んだ展開となりそうだ。

なお、本日はユーロ圏6月HICPの発表が予定されており、市場予想は前月の+0.3%から+0.2%への低下が予想されているが、昨日発表のドイツ分は前年比+0.1%と、前月および市場予想(各々+0.7%、+0.4%)を大きく下回っており、下振れリスクがあり、どちらかというとユーロ安要因だが、ギリシャが焦点となる中でユーロの反応は限定的となりそうだ。

豪ドル/米ドルは、安値圏で推移しているがユーロ/ドルと同様に米利回りと米ドル相場の動向に左右されやすい展開が続きそうだ。本日はStevens・RBA総裁発言が予定されており(17:40)、豪ドル安志向を繰り返す可能性はあるが、金融政策での対応(利下げ)の可能性が高まらない限り、から脅しと捉えられ、市場の反応は限定的となりそうだ。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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