(写真=PIXTA)
はじめに
アベノミクスも3年目。2015年に入ってから株価はほぼ右肩上がりで堅調そのもの。年初からの上昇率は一時20%に迫りました。また、東証一部の時価総額(政府保有分を除く)は過去の最高額を更新。
1989年のバブルの絶頂期ですら超えなかった600兆円を突破しました。年初来高値を付けた6月24日以降はやや軟調に推移していますが、再び上昇基調に転じるのでしょうか。
筆者は株価を考える上でファンダメンタルズである企業業績、つまり「企業の稼ぐ力」がもっとも重要だと考えています。ここで「企業の稼ぐ力」といえば、決算期には新聞の紙面などをにぎわす売上高や利益といった会計ベースの数値を一番に思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、会計ベースの数値は必ずしも万能な指標ではありません。
たとえば、利益については事業の好不調以外にも、設備投資の増減なども減価償却費を介して変動要因となります。設備投資の方針が大きく変わった場合などには、その点を考慮した上で利益の推移を見る必要があると思います。
また、会計ベースの数値は採用されている会計基準に依存します。国ごとで会計基準が異なる場合には、国際比較がしにくくなります。昨今、グローバルに投資を行っている外国人投資家が日本の株式市場のメインプレイヤーです。
その外国人投資家は会計ベースの利益とあわせて、会計基準によらず国際比較がしやすいキャッシュ・フローも企業業績の尺度として参考にしている可能性があります。
そこで本稿では利益とあわせてキャッシュ・フローから企業業績や株価の現在の状況について考えたいと思います。なお、キャッシュ・フローとは企業の事業活動の中で獲得(または消失)する資金(キャッシュ)を指します。企業が実際に事業から「資金(キャッシュ)を稼ぐ力」を意味します。