キャッシュ・フローから見ると高値圏

PER(PriceEarningsRatio:株価収益率)とPCFR(PriceCashFlowRatio:株価キャッシュ・フロー倍率)を通して現在の株価を見てみましょう【図表3】。

PCFRはPERと比べて聞きなれない指標ですが、株価をCPSで割った投資指標です。PERのEarnings(利益)がCF(キャッシュ・フロー)に代わっただけです。株価がキャッシュ・フローの何倍まで買われているかをあらわしており、数値が高いほど株価が割高を意味します。

PERは足元16倍を下回っています。2012年10月以降で最もPERが高かったバーナンキ・ショック直前の2013年5月22日が16.4倍でしたので、まだ当時を下回る水準にあります。

さらに2006年、2007年は18倍を超えていたことを踏まえると、割高感はないのではないでしょうか。言い換えると、利益予想から見ると株価はまだ上昇余地があるといえます。

一方、EPSに比べてCPSの回復が遅れていることもあり、PCFRは9倍目前です。既に2013年5月22日(7.8倍)を超え、ショック前の水準(9倍)に迫っています【図表3:点線丸囲部分】。

高値圏に足を踏み込んでいるといえるでしょう。キャッシュ・フロー予想から見ると、事業から資金を得る力が今後大きく上方修正されない限り、上昇余地が限られているのではないでしょうか。

企業業績といっても普段目にする利益とキャッシュ・フローとで趨勢が同じでも見える景色は若干異なっていました。TOPIXは6月24日に年初来高値を付けましたが、それ以降は調整しました。ギリシャ問題などを受けて投資家のリスク回避姿勢が強まったためですが、実はPCFR9倍の見えない壁も関係したのではないでしょうか。

PERとPCFR

前山裕亮
ニッセイ基礎研究所 金融研究部

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