利益と比べて緩慢なキャッシュ・フローの拡大
まずはEPS(一株当り利益:青線)とCPS(一株当りキャッシュ・フロー:緑線)について見ていきましょう【図表1】。
株価ほど急激ではないものの、EPS、CPSともに2012年12月以降は拡大傾向にあります。特に、EPSについては足元の予想が107ポイント。2006年、2007年のピーク時ですら103ポイントでしたので、5%上回っています。利益自体はショック前を超える水準まで戻ってきたことが分かります。
しかし、その一方でCPSはどうでしょう。足元の予想値が195ポイントとピーク時の204ポイントから4%下回っています。EPSと同様に回復してきているものの、ショック前の水準に戻るにはもう少し時間が必要なようです。
なお、TOPIX(赤線)は足元1,600ポイント台で推移しています。6月に18年半ぶりの高値水準をつけた日経平均株価に注目が集まっていますが、より市場全体の動きを表しているTOPIXはCPSと同様にいまだにショック前の高値(1,800ポイント)を突破できていません。キャッシュ・フローの拡大の遅さが関係しているのではないでしょうか。
減価償却費の減少が利益を底上げ
ここでキャッシュ・フローが利益と比べて回復度合いが緩やかになっている要因の一つとして、減価償却費の減少を挙げたいと思います。減価償却費はコストですので、減少すれば増益要因になります。
ただし、あくまでも会計上のコストであり実際に費用は発生しないため、キャッシュ・フローには影響ありません。キャッシュ・フローが拡大しなくても、減価償却が減少するとその分だけ利益が底上げされます。この場合、資金を稼ぐ力自体は変わらないので、手放しで喜べない増益であると筆者は考えています。
実際に2008年度以降はリーマン・ショックを受けて企業が新規の設備投資を控えたことなどから、減価償却費は減少傾向にありました【図表2:左】。2013年度に反転しましたが、それでもショック前の2007年度よりは低水準でした。
一方、2014年度は2007年度対比で8ポイントほど増益になりましたが【図表2:右】、減価償却費の減少分(9ポイント)と同程度でした。事業から資金を得る力は増益分ほど改善していなかったことが分かります【下式】。