来週の見通し:欧州(エレキテル)連合は、ダメダメ?

来週は、週末5日のギリシャ国民投票の結果如何で大きく変わってくる。債権者側の改革案に対してイエスとなるのが市場が想定するメインシナリオの模様で、その場合は、目先のイベントリスクからくる不透明感の後退から、米中長期債利回りの上昇とドル高・円安に繋がりそうだ。

他方、ノーとなる場合にはギリシャのユーロ圏離脱、欧州連合(EU)離脱のリスクが一気に高まることになり、リスク回避的な動きから米中長期債利回りが低下しドル安・円高となりそうだ。ギリシャ問題に対するユーロ/ドルの反応関数は一筋縄ではいかないが、米利回りとドルの変動を通じたチャネルが短期的には大きそうだ。

■米ドル/円:予想レンジ121.5~124.5円

ドル/円は、5日のギリシャ国民投票で、債権者側の改革案に対してイエスの場合は、目先のイベントリスクからくる不透明感の後退から、米中長期債利回りの上昇と共に124円台半ばの「黒」天井を試す展開となりそうだ。他方、ノーとなる場合にはギリシャのユーロ圏・EU離脱のリスクが一気に高まることになり、リスク回避的な動きから米中長期債利回りの低下と共に122円方向動きとなりそうだ。

なお、ギリシャ国民投票でイエスの場合には、米経済指標にも反応しやすくなりそうだ。来週は6日にISM非製造業景況指数、7日に貿易収支、8日に6月FOMC議事要旨、そして10日にYellen・FRB議長講演が予定されている。中でも貿易赤字が予想比大きくなると、ドル高の景気への悪影響が嫌気されるかたちとなり、利上げ期待の若干の後退とドル安に繋がりそうだ。

■ユーロ/ドル予想レンジ:1.080~1.140ドルユーロ/円予想レンジ:133.0~139.0円

ギリシャ問題に対するユーロ/ドルの反応は一筋縄ではいかなそうだが、米利回りとドルの変動を通じたチャネルが短期的には大きそうだ。

国民投票で債権者側の改革案に賛成多数となる場合には、Tsipras首相や緊縮財政反対派の勢力低下と、ECBによる短期的な流動性支援再開による銀行再開、および第3次金融支援に向かう可能性が高まり、ギリシャのユーロ圏離脱リスクの後退から、米利回りとドルの上昇と共に、ユーロ/ドルは下落しそうだ。

他方、ドイツ10年債利回りの上昇と共にユーロが上昇する、というシナリオもあり得るが、最近はそうした動きはみられていない。なお賛成多数が僅差の場合には、Tsipras首相が居座るリスクが残り、市場ではあまり好感されないかもしれない。

他方、反対多数となる場合、交渉決裂とギリシャのユーロ圏・EU離脱の可能性が高まり、当面の混乱の可能性を嫌気してリスク回避的な動きとなりそうで、米利回りとドルの低下圧力を受けてユーロ/ドルはむしろ上昇しそうだ。

他方、ギリシャ、イタリア、スペインなどの周縁国債券利回りの上昇とドイツ利回りの低下(=対独スプレッドの拡大)、はユーロ安要因だが、こうした場合にはECBが債券購入プログラムの対象として周縁国債券に重点を置いたり、量的緩和の前倒し・拡大といった措置を取る可能性が逆に高まり、悪影響は和らげられそうだ(ECB追加緩和自体は、特にECBのバランスシート拡大に繋がる場合にはユーロ安要因だが)。

■豪ドル/米ドル:予想レンジ0.740~0.780ドル豪ドル/円:予想レンジ92.0~95.0円

豪ドルもある程度、ギリシャ国民投票を受けた米ドル相場の動向の影響を受けそうだが、豪州では7日にRBA理事会、9日に豪雇用統計発表が予定されており、特に豪雇用統計では、前月6.0%へ予想外に低下してRBAの利下げ期待を後退させた失業率が再び上昇に向かうかが注目される。

市場予想は6.1%だが、それ以上に上昇すると利下げ期待が再び高まり、豪ドル安に繋がりそうだ。なお、RBA政策理事会では政策変更は予想されておらず、声明文でも豪ドル安を望む文言に明確な修正は加えられない可能性が高く、材料となりにくそうだ。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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