(写真=PIXTA)
ドル円相場は6月上旬に125円台に達した後、(1)黒田日銀総裁発言が円安けん制と捉えられたこと、(2)6月の米FOMCの内容がややハト派的で利上げペースも緩やかになると示唆されたことから、円高方向に揺り戻し、足元では122円台後半まで戻している。
結局、米FOMCでは特定の利上げ時期は示唆されず、経済情勢次第との姿勢が強調された。米経済のベースにある雇用・所得は堅調であることから、今後は景気の回復基調が強まるだろう。徐々に利上げ観測が高まるとみられるため、今後3ヵ月の方向性は円安ドル高との見通しを維持する。
また、これまでの原油価格上昇が今後LNG価格に反映されることで、本邦貿易赤字が拡大に向かうことも円安圧力になる。ただし、当面125円超の領域では当局によるけん制が警戒されやすく、ドル高の勢いが抑制されるため、大幅な円安ドル高は見込んでいない。
ユーロ円相場は、140円間際で高止まりしている。欧州金利の高止まりに加え、ギリシャ問題緊迫化が複雑な影響を与えている。同問題は直接的にはユーロ売り材料だが、一方でリスク回避に伴うユーロ売りポジションの買戻しを誘発しており、ユーロ安圧力が相殺されている。
山場を迎えているギリシャ問題だが、今後の展開と市場の反応には不透明感が強く、ユーロ円は当面上下に振れやすい。その後は、同問題の不透明感緩和に伴って、ECB量的緩和継続を材料とするユーロ売りポジションが再構築されることにより、ユーロ安に向かうと予想。
長期金利は欧州金利の影響を受けて大きく上昇した後に低下、足元は0.4%台前半にある。今後は欧州金利が落ち着くことで、一旦低下に向かうが、次第に利上げ観測に伴う米金利上昇が上昇圧力になる。3ヵ月後は現状比横ばい程度と見ている。(執筆時点:2015/6/22)
上野 剛志
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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