取組みの成果

次にこうした努力がどのような形で表れてきたかについて整理してみます。

(1)一人当たりの年金額

これまで述べたような努力の結果、プライマリーペンション(年金の中心となる部分)は通常のケースで20%、最大で40%の削減になったと報告されています。特に年金額の高い層(月額1,700ユーロ、約22万円以上)の受給者の減少が顕著です。

年金額が月額1,600ユーロ(約21万円)以下の層については、その総数に変化は無いものの、右のブロックから左のブロックへの移動があまねく生じているのではないかと考えます(図1)。

年金月額ごとの分布例

(2)年金支出額

次にこうした取組みの結果、年金制度の支出規模の変化を提示しているのが図2です。これは2010年と2013年当時の見通し(財政改革無しの場合)及び2013年に導入した財政改革案の計画値とその実績を重ねたものです。少なくとも2013年までの実績を見る限りでは努力の成果を確認できます。

年金支出額の推移

(3)対GDP年金支出比率

ギリシャの財政危機がクローズアップされる以前から、GDPと比べてギリシャの年金制度の規模が大きすぎることは問題視されていました。

2007年当時の推計では、年金制度を当時のまま放置した場合、年金支出総額(対GDP)は、11.7%から24.1%まで上昇すると予測されていました。その後2010-2013年の推計では足許の比率は上昇傾向にあるものの、2060年に向けては14%程度で安定するという見通しになっています。

(4)所得代替率

所得代替率には複数の定義があります。ここで見るのはOECDの手法によるもので、平均的な就業者の平均生涯賃金とそれに基づく年金額の比率です。ギリシャの場合、2010年の数値では、所得階層に関係なく95.7%と極めて高い値になっていましたが、2012年の数値では、所得階層が高いほど代替率が下がるという一般的な姿になっています(図表3)。

グロス所得代替率の変化

こうしてみると、2010年以来取り組んできた年金制度の改革は、それなりの成果をもたらしたように思います。ただ前回のレポートにも書いた通り、この改革を上回るスピードでギリシャ経済の疲弊が進んでしまったことがここ数ヶ月の混迷の原因となっています。