賃貸住宅における防災力を強化したマンション認定制度について
◆大阪市の認定制度
大阪市の「防災力強化マンション認定制度」は、総合的な防災対策について一定の要件を満たしたマンションを市が認定する制度である(1)。認定には総合的な防災対策を要件としており、認定マンションに入居することは、備えの面も共助の関係づくりという面でも、高い安心感を得られよう。事業者も入居募集の際にそれを付加価値としてピーアールすることができる。
この制度は、分譲マンションだけでなく、賃貸住宅も対象にしている。ところが、今年4月の時点で 30 件以上を認定した中で、賃貸住宅は2件にとどまっており、賃貸物件については問い合わせも少ないという(2)。
分譲マンションの場合、販売後は管理組合が主体となって、認定基準に定められた防災の取り組みを行うことになるが、賃貸の場合はオーナーあるいは管理会社がそれを担うことになる。認定が入居希望者にアピールするメリット以上に、そうした点を負担に感じる面があるのかもしれない。
◆墨田区の認定制度
今年4月1日に、東京都墨田区が「すみだ良質な集合住宅認定制度」をスタートさせた。大阪市と同様、対象となる集合住宅であれば、分譲、賃貸を問わない。この認定制度には、「子育て型」と「防災型」があり、それぞれの基準を満たした集合住宅を区が認定するものである。
「防災型」では、防災対策を施した良質な集合住宅を「防災や災害に配慮した機能を有する集合住宅で、災害発生から3日間、避難所に行かず生活ができる住宅」と定義した上で、認定に必要な要件を定めている。
認定要件には、備蓄倉庫に飲料水や食料を準備し適正に管理することや、防災用品を各住戸、新規入居者毎に配備することの他、大阪市同様年に1回以上の防災訓練の実施や地域コミュニティの防災訓練への参加も定めている。(図表-2)。
建設時の整備で済むハード面と異なり、こうした定期的、継続的に行わなければならない対策が、大阪市同様、賃貸住宅のオーナーや管理業者にとっては、管理業務を増やし、経費の面でも負担に感じるかもしれない。
これに対し墨田区では、支援メニューとして補助制度を設けている。認定要件を超える整備を行った場合、掛かった整備費に対し一定の補助を行う他、入居者が実施する防災訓練などの活動に掛かった経費に応じて年間5万円まで補助を行う。これにより経費面での負担を減らし、制度活用の促進を図ろうとしている。
区は年間に建築される制度対象集合住宅のうち、戸数ベースで3割程度にあたる年間 750 戸の認定を当面の目標にしている。すぐには目標どおりの認定数に至らなくても、当初年間数件の認定があれば、その実例が知られるようになることで、徐々に増えていくのではないかと思われる。