共助の関係づくりのための、オーナー、管理会社、入居者、地域の連携

以上、オーナー、管理会社、入居者それぞれにとって必要な取り組みを示したが、これら3者それぞれの取り組みを進めたとしても、賃貸住宅の場合、入居者同士の交流や、入居者と地域との交流を進めて共助の関係を築くことは容易ではない。

管理組合がある分譲マンションと違って、特に民間賃貸住宅の場合、入居者一人がそれを求めたとしても、入居者全体に広げるのは難しいことが容易に想像できる。さらに地域との交流は、何らかのきっかけがないと入居者の側からそこに入っていくのは簡単ではないのが現状であろう。

そこで重要なのは、地域の側の取り組みである。地域住民の方から賃貸住宅入居者に関心を示し、交流の機会をつくって、参加を促していくのである。それが直接的に防災訓練であってもいいし、親睦的な機会でもよいかもしれない。地域の側から、賃貸住宅入居者を迎え入れていくことが必要である。

その際、もう一つ重要なことはオーナーや管理会社が、地域と入居者の媒介役を担うことである。防災訓練に参加してほしいという地域の意向を、賃貸住宅入居者に漏れなくスムーズに伝えるためには、オーナーや管理会社が日頃から地域と接点を持ってその意向を受け取り、入居者に伝える、そうした関係性が必要になる。セキュリティが強化された昨今の賃貸住宅ではなおさらそのことが重要であろう。

このように賃貸住宅入居者の共助の関係を築くためには、オーナー、管理会社、入居者そして地域の連携が必要不可欠である。この4者の連携を踏まえて、賃貸住宅の災害対策を強化するための、認定制度を超える制度構築を検討する必要があるのではないだろうか。そのことは、地域全体の防災力を高めることにもつながるはずである。

(1)詳しくは拙著「マンションの防災力を強化する本当のメリット-自治体によるマンション認定制度に期待」研究員の眼2013年4月17日を参照
(2)大阪市都市整備局企画部住宅政策課へのヒアリングに基づく。

【謝辞】
本稿執筆にあたって、大阪市都市整備局企画部住宅政策課、墨田区都市計画部住宅課にヒアリングや資料提供の面で協力いただいた。深謝申し上げたい。

塩澤誠一郎
ニッセイ基礎研究所 社会研究部 研究員

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