これまで王者として君臨していた日生が、打倒第一生命に向け、なりふり構わぬ反転攻勢を4月以降に開始。中期経営計画の中で、潤沢な手元資金などを武器に、今後10年で最大1兆5千億円を国内外の生保会社の買収に充てることを表明するとともに、これまでマイノリティー出資にとどめてきた経営方針も方向転換し、マジョリティー出資もいとわない姿勢を打ち出した。

損保も含めた保険業界を見渡せば、東京海上ホールディングスも、海外でのM&Aで生保分野にも着々と手を広げ始めている。このままでは、国内外の優良保険会社が、日生、第一どころか、東京海上HDにまで奪われかねない。

ある関係者は、「明安と住生は、日生の予想外の動きをみて、早めに上場して買収資金を用意しておかないと、ここぞのケースで太刀打ちできなくなると、焦りを感じ始めたと聞いている」と打ち明ける。

あとは経営トップの判断を待つだけ

M&A業界では、既に1兆5千億円の買収資金を準備した日生の名は世界規模で轟いており、「まずは買収案件が出たら、日生に売り込め」とさえいわれているという。

日本経済新聞をはじめ、一般紙が「日生が豪大手銀行ナショナル・オーストラリア銀行傘下の保険事業の買収を検討、2千億~3千億円規模」と地元紙の報道をベースに一斉に後追い報道したが、「実際の評価額はもっと下。ナショナル・オーストラリア銀行側が買収金額をつり上げるために、日生の名前を勝手に入れた上で豪地元紙に仕掛けたリーク」(業界関係者)との見方が根強い。

既に、こうしたM&Aをめぐる駆け引きは世界経済の回復で激化しており、規模で見劣りする明安、住生は、ライバルに太刀打ちできずに蚊帳の外に置かれるケースも今後出てくるとみられるなど、残された時間は長くない。

特に明安は、17年3月期までに2500億円を掛け国内外での買収や出資を進めるとの方針を掲げてきたが、「オーストラリア銀行の保険事業がぎりぎり買える規模の買収額では、この先の買収が思いやられると危機感を強めているもよう」(大手金融機関)で、早期の上場をもくろむ動きも社内であるようだ。このため、業界内では「住生よりも、明安のほうが上場が先になるのではないか」との見方も出てきている。

明安は三菱グループ、住生は、三井住友グループのそれぞれの銀行、証券会社が上場に向けた資産査定を済ませたとされており、「既に外堀は埋まった。あとは、経営トップの最後の決断を待っているだけ」(大手銀行幹部)とまでいわれている。Xデーは近そうだ。

(この記事は7月21日号「 経済界 」 に掲載されたものです。)