出勤
(写真=PIXTA)

政府は、7月と8月の2か月間、出先機関を含めた国家公務員の始業時間を通常より1~2時間早める「朝型勤務」を導入した。退庁時間を早めることにより、慢性化する長時間労働の是正と民間への波及を期待するのが狙いというが、果たして思惑通りの効果が得られるのか。


首相肝いりの「日本版サマータイム」

「生活スタイルを変革する新たな国民運動を、政府を挙げて展開する」。安倍首相は3月下旬の閣僚懇談会でそう述べ、夏季期間中の国家公務員の朝方勤務を指示した。通常は午前8時半~9時半の勤務開始時間を7時半~8時半に早め、夕方以降の会議は設定しない。早朝出勤した職員の終業時間は、午後4時15分~5時15分にするという。

朝方勤務の狙いは、明るい時間が長い夏に朝早くから働き始めることで、夕方を家族などと過ごす「オフ時間」に充ててもらうことだ。働き方の見直しから、ワークライフバランスの実現を目指している。


「女性活用」に思わぬ矛盾も

朝方勤務については、塩崎恭久厚労相も経団連に対し、各企業でも取り組むように要請。経団連の担当者は「労働力不足が現実となる今、優秀な人材にとどまってもらうには長時間労働など会社風土の改革が急務。各社の経営陣は相当の危機感を持っている。朝型勤務は働き方を変えるきっかけになるかもしれない」と要請を前向きに受け止めている。

けれども、通勤時間が早まれば、子育て世帯には早朝保育の活用を迫られる可能性が大きくなる。また、定時に帰れないなどこれまで以上の残業を招く恐れもあり、安倍首相の掲げる「女性活用」とは裏腹に、母親たちからは「子育て疲労に陥りそう……」といった困惑の声も聞こえてくる。


時間外勤務が減少したケースも

無論、こうした朝型勤務の導入が成果を挙げているケースもある。大手商社の伊藤忠商事 <8001> は、国内の本社、支社、支店勤務の正社員約2,600人を対象に、午前5時~9時までの間に働いた時間の賃金を高く設定。さらに、午後8時以降の残業を原則禁止にした。

同社の広報担当者によると、「朝型勤務は社長が発案し、経営陣から社員へとその本気度が伝わった。最初は経営面でマイナスとなることも覚悟していたが、残業が減るなど、働き方改革につながり、予想以上の効果が出た」のだという。