六本木ヒルズの価格は高すぎるのか?
例えば、六本木ヒルズのレジデンスを考えてみましょう。築10年を超え、内装は少々古めかしいものとなっています。しかし、坪単価は800万円~1,000万円(A棟、B棟)で推移し、ほとんど値下がりしていません。投資利回りは僅か2%程度です。この点、六本木の相場は坪600万円くらいでしょう(人気のある築浅のThe Roppongi Tokyoでも坪700万円前後)。
しかし、六本木ヒルズは投資だけでなく実需(オーナーが自分で住む)が強いことに加えて、オーナーになることのステイタス(「俺は六本木ヒルズのオーナーだ!」と自慢できる点)など、地方の投資家からの憧れなどの要因によって、依然として高い価格を維持しています。
何より、六本木ヒルズの物件が売りに出されることは、ほとんどありませんから、出るとすぐに買い手が付いてしまいます。六本木ヒルズは、割高で買っても大丈夫であるとされる典型的な物件です。なぜなら、割高で買っても割高で売り抜けられるからです。六本木ヒルズの価格が暴落するような事態が起きるとすれば、もはや日本の不動産市場そのものが壊滅してしまうでしょう。
加熱するタワーマンション投資
「タワーマンション節税」という言葉が一般化してきているように、タワーマンション投資の人気が加熱しています。当法人はスタイルアクト社(沖有人社長)と提携してお客様にタワーマンションを活用した相続対策をアドバイスしていますが、タワーマンションの購入が非常に増えてきています。
タワーマンションなど区分所有物件は相続税評価も市場価格を大きく下回ります。タワーマンションは同じ建物に数多くの世帯が住んでいるため、1区分当たりの敷地面積が極端に小さくなるからです。したがって、高さが高いマンションの物件(同時に価格も高くなります)を買えば、敷地権が小さくなり、相続税評価は小さくなるということです。
一般的に低層階より高層階のほうが眺望がいいから販売価格が高くなり、それが相続税評価と市場価格の乖離をもたらすメリットと説明されています。確かにそうですが、それだけがメリットと考えるのは間違いです。高層階の価格が高いのは事実ですが、実際のところ、低層階と高層階の価格差はそれほど大きくありません。
また、高層階の物件を買いたくても、市場に売りに出ている物件はほとんどありませんから、相続対策のために買いたくても買うことはできません。本当のメリットは、敷地権割合が著しく小さくなることがタワーマンションの最大のメリットなのです。したがって、小規模なタワーマンションよりも、大手建設会社が開発した大規模なタワーマンションのほうがメリットが大きくなります。
今後、地価が上がり、相続税の負担が重くなればなるほど、タワーマンションを買おうとする人が増えることでしょう。しかし、タワーマンション人気に便乗して、理論価格を大きく上回る高値で売却しようとする既存オーナーがいることを忘れてはなりません。
不動産価格は、立地条件によって決まります。賃料(利回り)、空室率、土地価格の動向によって不動産価格は決まります。理論価格を超える高値で買ってしまえば、買った瞬間に含み損失が発生します。それでは、相続対策として節税を実現したとしても、個人の経済的利益が減殺されます。不動産物件選びには注意しなければなりません。
したがって、不動産投資は慎重に行わければなりません。タワーマンションはとても人気があるため、売り物が出てきたら、すぐに買付けを入れなければ買うことはできません。
仲介業者は「これはとてもよい物件です。ぜひ買いましょう!いますぐ『買付け』を入れなければ買えませんよ!」と言ってくるはずですが、それが本当に良い条件なのかどうか瞬間的に判断することは容易ではありません。
私はお客様からそのような電話相談があったときには、その日のうちに妥当性を分析して回答するようにしています。タワーマンション投資には、資産税と不動産投資に詳しい税理士のアドバイスは不可欠だと考えます。不動産投資の妥当性を判断する観点は数多くあります。その中から、このコラムの読者の方の関心の高そうなものをいくつか列挙しましょう。
利回りは高いほうがいいのか?
まず利回りについてです。「都心のタワーマンションは利回りが低すぎる(3%程度)、郊外や地方のマンションであれば5%の利回りが狙える。やはり、不動産投資したからには、フローの所得が欲しい。」という話をお客様から聞かせていただくことがよくあります。
しかし、郊外や地方の物件の利回りの高さは値下がりのリスクの見返りです。つまり、高いリターンには高いリスクが伴うという投資の基本原理に従います。なぜ郊外のマンションの利回りが5%で、六本木ヒルズの利回りが2%なのでしょうか?それは、郊外のマンションよりも六本木ヒルズを買いたいと考える人の数のほうが圧倒的に多いからです。
人気の高い物件は大きく値下がりしませんが、人気の低い物件は大きく値下がりする可能性があります。したがって、利回りの高い郊外や地方のマンションは、将来の投資損失を覚悟しなければならないということです。