不動産サブセクターの動向

◆オフィス

2015年前半は、2月に品川シーズンテラス(延床面積20.6万m2)、4月に東京日本橋タワー(同13.7万m2)、大崎ブライトタワー・ブライトコア(同9.2万m2、同4.5万m2)などの大規模ビルの供給があった。

これらのビルの多くが空室を抱えての竣工であったため、三幸エステートによると、2015年第1四半期の東京都心Aクラスビル3の空室率は4.0%から4.8%に上昇し、第2四半期も空室率は4.8%で横ばいとなった。一方、Aクラスビルの成約賃料(オフィスレント・インデックス)は上昇基調にあり、前期比+7.1%(前年比+17.2%)という大幅な上昇であった(図表-15)。

Aクラスビルの賃料上昇は、好立地の都心大規模ビル空室率の低下を背景にしている。大規模ビルの空室率は渋谷区で1.25%、千代田区で2.51%に低下している(図表-16)。

三菱地所では千代田区丸の内地区に保有するビルの空室率が1.8%まで低下しているという(4)。東京都心部では中型ビルなどでも空室率の低下が続いているが、賃料の大幅な上昇は都心部Aクラスビルで突出しており、中小型ビルまで波及しているとは言いがたい。

今期、Bクラスビルでは前期の大幅上昇の反動もあり▲4.6%の下落だった。オフィスレント・インデックスによると、リーマンショック後の賃料の底からの上昇率は、Aクラスビルで+69.5%、Bクラスビルで+43.9%、都心3区(千代田区・中央区・港区)の全体平均は+5.7%にすぎない(図表-17)。なお、Bクラスビルの空室率は3.6%でAクラスビルを下回っている(図表-18)。

図表15 16 17 18

三鬼商事のデータによると、2014年10月以降、オフィス賃貸面積の増加ペースが落ちている(図表-19)。2015年2月には大規模ビルの竣工もあり賃貸面積は大きく増加したが、前年までと比べると賃貸面積の増加分の縮小が目立っている。

ただし、2015年後半や2016年に竣工予定のビルなどへの内定が進みつつあり、現時点では賃貸需要減少への強い懸念を持つ段階にはない。人手不足や建築コストの高騰などから、新規供給の延期が見られ、2017年の竣工予定面積が縮小していることも、今後1~2年のオフィス市況にはプラスと考えられる(図表-20)。

全国的にもオフィス空室率の低下傾向は続いている(図表-21)。このうち、名古屋では、2015年秋に大名古屋ビルヂング(延床面積14.7万m2)とJPタワー名古屋(延床面積18.0万m2)の竣工があるため、オフィス市況の動向に注目が集まっている(図表-22)。

図表19 20 21 22

◆賃貸マンション

東京都区部の賃貸マンション賃料は上昇基調が続いている(図表-23)。

札幌、福岡でも上昇傾向にある一方、大阪、名古屋、仙台などでは横ばい圏にある。仙台では被災地での住宅再建や復興公営住宅建設の進展などから、みなし仮設住宅として借上げられていた民間賃貸住宅数が減少しているため(5)、賃貸住宅数の回復などから今後、賃貸住宅需給はしだいに緩和していくことが見込まれる。

東京都心部の高級賃貸マンションの空室率は低下基調が続いている。賃料は空室率の低下に伴い、2014年第1四半期以降、急速に上昇したが、今期は前期比▲4.4%の下落と、東日本大震災時(2011年第1四半期、同▲4.4%)以来の大幅な下落だった。

今回の賃料下落は、築年数が古く面積が広い比較的単価が安い物件の成約が多かったためのようだ。日本人の都心居住の進展と外国人人口の増加傾向から、都心部の高級賃貸マンションの需要は堅調であり、市況も第3四半期には持ち直してくると考えられている。

図表23 24