◆商業施設・ホテル・物流施設
2015年4-6月期の小売業販売額は前年比+2.9%、大型小売店販売額(既存店)は同+4.4%と高い数値となった。これは前年に消費税増税による駆け込み需要の反動減があったからだ。4月の百貨店販売額(既存店)は前年比+13.7%と高い上昇率を達成したが、6月には上昇率も同+0.4%と落ち着いてきた(図表-25)。
ただし、東京都区部では相対的に堅調が続いている。4月から6月の東京都区部の百貨店販売額(既存店)はそれぞれ前年比+17.7%、同+11.5%、同+5.6%だった。
百貨店の販売額増加には、円安などを背景にした訪日外国人による購入も影響している。日本百貨店協会によると、外国人旅行客による免税品の売上高は4月に過去最高の197.5億円に達し、免税品目の拡充もあり6月には前年比で+307.1%の大幅な増加となった(図表-26)。
三越伊勢丹銀座店では、5月の売上は前年比で+33.2%の増加で、売上高における免税品割合は24.7%に達している(6)。大阪の大丸心斎橋店でも外国人訪日客が売上げを下支えしており、免税品の売上げが店全体の4割を超す日もあるという(7)。
東京都心部での販売好調を背景に、東京の商業エリアの店舗賃料は上昇基調にある。1階店舗の募集賃料(2015年第1四半期)は、銀座で前年比+33.1%、表参道で同+25.6%、渋谷で同+18.7%と大幅に上昇した(図表-27)。
6月の訪日外国人旅行者数は前年比+51.8%増の160万人(前年は106万人)だった。2015年は6月までの半年で914万人となり、このままの状況が続けば2015年の一年間で1,800万人を超えるのは確実となっている(図表-28)。訪日外国人旅行者数の増加に加え、日本人の国内旅行の増加もあり、国内のホテル稼働率は近年で最も高い状況が続いている(図表-29)。
宿泊旅行統計によると、2015年第2四半期の延べ宿泊者数は1億1,847万人8(前年比+7.0%)で、このうち日本人は前年比+2.0%の増加、外国人は同+49.0%の増加だった(図表-30、31)。2010年以降、延べ宿泊者に占める外国人比率は6~7%で推移してきたが2014年から大幅に上昇し、2015年第2四半期には、外国人比率は14.8%に達している。
今年に入り日本人の宿泊も一年ぶりに増加に転じていることから、例年、日本人の宿泊が増える8月中はさらに宿泊施設の逼迫度が高まることが予想される。宿泊施設の需給が逼迫する中で、建築費の高騰などからホテルの建築がさほど進展していない一方、ホステルやカプセルホテルが急速に施設数を増やし、増加する宿泊需要の受け皿になっている。
現在、民泊を含めた宿泊施設に関する規制緩和の議論が急速に進んでおり、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、宿泊施設のさらなる供給が望まれる。
シービーアールイー(CBRE)によると、2015年第2四半期の首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率は▲0.4ポイント下落し3.6%に、近畿圏では▲1.2ポイント下落し4.8%となった(図表-36)。
東京圏では東京ベイエリアと外環道エリアで空室率が0.0%になるなど、物流施設需給はタイトな状況が続いている。2015年第4四半期以降に物流施設の大量供給が予定されているが、施設需要は強く、2015年第4四半期に関しては既に供給見込み床の30%のテナントが内定しているという。
近畿圏でも、前期の供給によって空室率が上昇したが空室の消化は着実に進んでいるようだ。東京圏、近畿圏ともに中・大型施設の平均募集賃料はほぼ横ばいか若干の上昇となっている(図表-33)。