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中国人民銀行(中央銀行)が人民元の対ドル基準値を3日連続で切り下げた問題は、人民銀の副総裁が会見するという事態にまで発展した。様々な見方が広がっているが、マネックス証券の広木隆氏は「(説明通り)目的は輸出拡大ではなく、通貨の安定だろう」と見る。


米利上げが9月と言われる中でのしたたかな戦略だ

現時点(8月13日午後3時)で市場は落ち着きを取り戻している。(今回の連続切り下げの)最初は何が起きているか分からなかったが、意図が分かって過度の不安が解消されてきたからだ。

当初、元安を誘導して自国経済を強くするという、なりふり構わぬ意図があると見られたため、「通貨安戦争が起きる」「アジア通貨危機の再燃か」という不安があったが、そうではないことが分かった。人民銀行の副総裁も異例の会見を開いて、輸出振興ではなく人民元の安定を目指した措置であり、より有効な市場化システムの確立を目指したものと説明している。

たしかにその説明を「口先だけでは」と勘ぐることもできるが、そもそも為替レート(の影響)だけで輸出を伸ばそうとすれば、相当に安くしないといけない。円にしても2年もかけて安くなったし、それでも対して輸出は伸びていない。アジアの他の通貨も安くなっている。元安だけで輸出を伸ばすのは無理なのだ。

景気が弱い中国が、好景気で9月には利上げとまでいわれている米国の通貨と連動させ続けるのは辛いはずだ。これはたとえは悪いが、ユーロの中にギリシャがあるようなもの。この矛盾を解消することが目的と考えるのは自然だ。

米国やIMFからは為替操作国だなどといわれ、IMFのSDR(特別引出権、IMF加盟国が持つ資金引き出し権)の対象に人民元を加えるという議論も、結論は先送りになっている。このことから、対象にならないことを理由に「中国がなりふり構わない措置に出た」と見られたが、そうではない。

ただ(SDRに入るには)自由化された通貨であるべきだ。今回の措置も中国にしてみれば、為替操作をしたわけでもなく、自由化に向けた一歩を踏み出したら元が安くなったと説明できる。その結果、自国経済にいい影響が出るのであれば願ったりだ。実際、アメリカも評価している。アメリカの利上げが9月と言われているなかで、まさに中国のしたたかな戦略だと思う。

個人投資家は不安視することはない。為替だけでインバウンド消費や日本の輸出競争力に大きな影響が出るわけではない。投資を考える上ではあくまでファンダメンタルズを見るべきなのだ。

広木 隆(ひろき・たかし)
マネックス証券チーフ・ストラテジスト

国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャーなどを歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析が強み。2010年より現職。

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