丸山俊


9月の米利上げ濃厚に

米国GDPの約3分の2を占める個人消費のトレンドを把握する際に利用される7月の小売売上高が発表された。結果は、事前予想と同じ前月比+0.6%、除く自動車ベースでも前月比+0.4%と個人消費の堅調さを裏付ける内容となった。

これにより、9月または10月の連邦公開市場委員会(FOMC)における米国の利上げは勝負あったという印象だ。国際金融市場を揺るがした中国の人民元切り下げの余波も収まりつつあり、もはや、米国が利上げを躊躇う理由はないであろう。


人民元安、恐るるに足らず

そもそも中国の人民元切り下げは、1週間前にSDR採用を巡って国際通貨基金(IMF)が為替制度の自由化を進める必要があることを指摘されたことを受けて実施されたもの。

景気対策という側面ばかりが強調されるが、中国景気が通貨安誘導によって持ち直せば世界経済にとっても悪い話ではない。

日本国内では訪日観光客による爆買いに影を落とすとの見方も出ているようだが、そもそも中国においてパスポート所持者は人口の約5%に満たない高所得者層であり、 日本製品に求めているのは安心や品質である。

インバウンド需要に与える影響は軽微であり、日本国内に限らずインバウンド銘柄の株価調整は押し目買いの好機と考えたい。

一方、競合する周辺のアジア諸国などの新興国にとっては景気悪化・資本流出懸念が強まるであろうし、日本株も損失回避のヘッジ売りを浴びて急落の憂き目を見た。

今後は9月及び10月上旬に発表される8月及び9月の中国貿易統計で輸出の持ち直しが見られるかが、今後の人民元切り下げペースに影響を与えるだろう。

もっとも、この点について当面は人民元の大幅な切り下げはないだろうと見ている。なぜなら中国の貿易黒字はそのほとんどが服飾・雑貨類であり輸出の価格弾性値が高い考えられる。折しも米国では、バック・ツゥー・スクール(新学期がはじまる)、そして年末に向けて在庫を積み増す時期であり、案外早く中国の米国向け輸出が回復してくる可能性が高いからだ。

その結果、人民元相場の安定と前述の米国利上げ観測(仮に9月18日のFOMCで利上げを決定しなくても、議長会見でこれまで以上に利上げに向けた地ならしが進むであろう)が相まって、アジア通貨・株式、そしてそのヘッジ売買の矛先である日本株も自ずと安定してこよう。