秋にも日本株はボックス圏脱却へ

なお、日本株については4-6月期決算発表が一巡しつつあり、目先はマイナス成長が見込まれる4-6月期のGDP一次速報(8月17日発表)に注意が必要である。

民間在庫が攪乱要因だが、輸出・生産活動が停滞しているほか、個人消費や住宅投資も低調であり、景気回復の鈍さを投資家に印象付けよう。

もっとも、これにより株式市場では最近の原油価格下落の影響もあって日銀に対する追加緩和圧力が強まるため今の日本株は強い。

加えて、①10月1日の運用一元化を控え、国家公務員共済・地方公務員共済・私学共済等のいわゆる3共済の運用見直し、②東証の上場審査や9月末の半期決算を通過すればゆうちょ銀行・かんぽ生命の運用が積極化、③前述した日銀に対する追加緩和期待と米利上げによる黒田ライン(125円台半ば)突破への期待、④さらには国内GDP悪化を受けた景気対策への期待(補正予算と来年度本予算)と、日本株を来年央に向けて押し上げていく要素が揃っているように思われる。

8月17日の日本GDP統計、9月上旬の中国貿易統計と人民元、9月18日のFOMCで市場が動揺し、日本株が大きく調整すれば押し目と見てよいだろう。


米国株、利上げ後 は買戻しによって日本株をアウトパフォーム?

その一方、確かに国内の株高政策は日本株をまだまだ魅力的な資産クラスに留めているものの、米利上げ観測の高まりと共に進んだドル高と商品価格下落の影響で日経平均株価を既に20%以上もアンダーパフォームした米国株に割安感が台頭し始めている。

誰の目にも明らかに米国は利上げに向かっているため、ドルをロングし、コモディティーをショートし、リスク回避を優先する投資家は株式を利食い、米国債を買い進めてきた訳だ。

しかし、米国が最初の利上げを実施し、さらに2回目の利上げを急がないことが分かれば、こうした容易い(イージーな)ポジションは、いったん手仕舞われるのではないか。

その結果、ドル高の修正、商品価格の反発、米国株式の反発、米金利の上昇が起こる可能性がある。もちろん、その際に黒田日銀総裁が米国利上げによる流動性収縮懸念を打ち消すかのように追加金融緩和に舵を切れば、対ドルでの円高は回避されるかもしれない。

いずれにしても、米国景気が底堅いことは日本の利益である。しかし、株価パフォーマンスという視点で考えた場合、利上げに備えて調整を余儀なくされていた米国株の方が、最初の利上げの後は買戻しによって日本株をアウトパフォームする可能性が高いのではないだろうか。

丸山 俊 (まるやま しゅん)
BNPパリバ証券株式会社 日本株チーフストラテジスト

2001年、三和総合研究所に入社し調査部エコノミストとして日本経済の景気予測、マクロ分析を担当。その後、2005年にクレディ・スイス証券に入社し、計量リサーチや株式投資戦略を担当。2011年7月にBNPパリバ入社。

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