「だれ」が「どのように」運用するのか。

今般発表された案によると、年金積立金の運用は、これまでの地方政府の自家運用(銀行預金、国債)から、専門機関への委託運用へと大きく転換することになる。

各省等の地方政府は、今後、運営・管理を担う専門の「年金管理機関」と委託契約を結び、この年金管理機関が投資や保全・管理を行う金融機関を選定し、その業務執行について監督を行うことになる(図表1)。

図表1 年金積立金の運用案

現時点では、この年金管理機関が具体的に何にあたるのかは明らかにされていない。年金管理機関は、国が設立し、国務院が認可した機関と規定されているのみである。おそらく可能性が最も高いのは「全国社会保障基金理事会」であろう。全国社会保障基金は年金積立金とは異なり、年金積立金の収支が赤字になった場合の補填を目的に、2000年に創設された基金である(iii)。

運用は当該基金の理事会が管轄しており、運用先も株式、債券、プライベートエクイティ投資等、多岐にわたり、2014年の収益率は11.7%と高い。実は、国務院は年金積立金の運用に関する将来的な規制緩和を視野に、2012年以降、公的年金基金の委託運用が可能か、実験的な取り組みを行ってきた。

それが、積立金残高が最も多い広東省の一部の資金を活用した全国社会保障基金理事会への委託運用で、2014年は6%の利回りを確保している。このような実績を含め、当該理事会が年金管理機関になる可能性が高いが、現時点では日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のような、年金積立金の運用を専門とした機関を新たに設立する可能性も否定できない。

年金管理機関がいずれになるとしても、運用資金の投資や保全・管理については、民間(国有を含む)の金融機関が担うことになる。中心となるのは、全国社会保障基金の委託運用を担う18の金融機関(国内)(iv)、企業年金の委託運用先として認可されている31の金融機関である。

今般の案では、これらの金融機関以外に、豊富な投資の経験や優秀な業績、社会的な信用がある金融機関についても認可の枠を広げるなど緩和措置がとられている。案が施行された場合、およそ2兆元(約40兆円)が金融市場にもたらされるといった試算もあり、委託運用先の金融機関を増やすことを視野に入れているようだ。