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今回はある程度の富裕層や資産家の方であれば否応なしに耳に入ってきているであろう「富裕層や資産家に対する課税強化」について、いくつかの方面から検討してみました。 そもそもの日本の課税の趣旨から考えてみたり、日本の税率と海外の税率との比較を見てみたりして、富裕層や資産家に対する課税が強化されている傾向について検討してみたいと思います。


富裕層や資産家に対する課税強化

連日メディアで賑わいを見せている税制改正によって、およそ富裕層や資産家への課税が今後著しく強化される傾向にあるのは確かな事実といえます。累進課税制度の税率見直しによる最高税率の上昇や相続税基礎控除額の減少、そして消費増税(消費税も元々の消費額が高額になればなるほど税の負担額自体は増すことから、見方をかえれば富裕層や資産家への課税強化と捉えられる)などなど、景気好転に伴い一気に課税が強化される流れになっております。またNISAについても「100万円までは配当や株の儲けが非課税になります」とありますが、その制度導入の背景にある「配当所得及び譲渡所得に係る10%軽減税率の廃止」については、普段から100万円よりもはるかに高額の投資を行われている富裕層や資産家にとっては、立派な課税強化といえます。

ではなぜ富裕層や資産家に対する課税が強化されるのか?

まずは日本の課税の趣旨から様子を探ってみたいと思います。


日本の課税の趣旨

日本における課税の趣旨について調べてみました。 日本人であれば納税は国民の義務であるということについては小さい頃から教育の場で学んできておりますが、こと課税の役割については積極的に学んでこなかったように思います。端的に社会保障や公共サービスに用いられているものと整理されている方も多くいらっしゃると思います。しかしいざ調べてみると課税には社会保障サービス機能の他に2つ3つほど役割があることがわかりました。なかでも「所得の再分配機能」と「景気の調整機能」については富裕層や資産家に対する課税強化を紐解く鍵があるのではと思い、少し深く見てみました。

まず「所得の再分配機能」の説明としては、社会福祉が充実した国家であり続けるには、一定程度は国家が国民の私的財産に干渉することもやむを得ないとする考え方が含まれているようです。 次に「景気の調整機能」の果たす役割としては、景気上昇期には増税を、景気後退期には減税を、それぞれの状況に応じて国家が施策として実施することで、余剰資金の調節が可能となり、安定した国家運営を行うことが可能となるという考え方が含まれていました。

たしかに日本ではバブルの頃は税率が全体的に高い傾向にありましたが、近年までの不景気のときは低い傾向にあり、最近はまた景気上昇に伴い高くなる傾向にあります。この流れは課税の役割でいうところの「景気の調整機能」が発揮されているものと推測します。しかし「景気の調整機能」によって富裕層や資産家への課税強化が行われているのかというと、それは直接的なことではないように思います。おそらくこの機能は例えば富裕層や資産家といった特定の層に限定した話でなく、あくまで社会全体に発信される機能と考えられるからです。となれば、富裕層や資産家に対する課税強化の傾向は、残る「所得の再分配機能」によるもの、言い換えれば“国家による一定程度の私的財産への干渉”からくるものと言えるかもしれません。

では、富裕層や資産家ができることといえば何か?