ラウンドテーブルでの論点と本質的な意味

二つの指摘から、例えば住宅の建物評価手法が変わることで、家計資産における住宅資産評価額が増大し、住宅・宅地資産を資金化した場合における金融資産が増大することが期待できる、というのが重要な論点です。

つまり、報告書にもあるように、この議論をする意味は、中古住宅・リフォーム市場という住宅市場の一部にだけ焦点をあてたものではなく、住宅という“不動産”が「家計資産の中核を成すものであり、その価値の増大と流通・活用促進は、我が国経済と国民生活に大きなインパクトを与えるもの 」であるという認識を前提にしていることです。

これは、住宅という不動産の取得は、単に一世帯の一時期の生活における効用を高めることではなく、世代間を超えて引き継ぐ価値を持つ「資産」を受け渡してゆくことである、という前提に立っているのです。


中古住宅市場の整備による期待効果と整備の方向性

バブル崩壊後の地価の継続的な下落傾向に加え、人口減少など需給バランスの変化により全ての地域の地価上昇が望みにくい状況のもとで、住宅不動産の所有者が住宅売却時の差損を小さくするためには、住宅の建物価値がその状態に応じて適切に評価され、その評価が反映された取引が行われる必要があります。

その実現によって住宅資産が従来よりも価値あるものとして評価され、換金しやすくなれば、シニア世代にとってはライステージに応じた暮らし変えが実現します。あるいは、純資産のほとんどが住宅不動産である若い世代にとっては、ローン返済後に投資した分が適正に積み上がり、資産形成が進むことになります。


中古住宅市場整備に向けた4つの課題

その実現に向けて、①中古住宅の評価の適正化、②中古住宅の質に対する安心の付与、③市場の透明性・信頼性の向上、④住宅ストックの活用という4つの課題が設定されています。

それぞれ数年来の取り組みが進んでいますが、個別の詳細については報告書をご覧いただくことにして、いずれにしてもこうした施策が進むことで、住宅不動産の資産価値も、適切な評価ルールが定められ、ルールに評価が適時適切に行われ、その情報がきちんと開示されることでさらに価値が決まり、自らが使わなくなれば社会資本として有効に活用できる世代に移転する方向に向かっていることは明らかです。

このような発想はほかの金融資産ではすでに当たり前とも言えます。その意味でも、これからの住宅という不動産の取得には、従来のような消費的な考えではなく、「出口」の戦略を意識した「投資」的な考えを持っておくことが必要になってくると言えるでしょう。

ハイアス総研:2015年6月1日に設立。 ハイアス・アンド・カンパニー株式会社 の調査・研究開発部門として住宅消費者や住宅不動産業界・事業者が直面するさまざまな課題の抽出力をさらに高め、住宅消費者・事業者双方に有効な解決策の提示、その解決策の実行・推進を視野においている。

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