大丸百貨店,心斎橋
(写真=PIXTA)

阪急百貨店 <8242> の大改装、ハルカス効果を狙った近鉄百貨店 <8244> 、そのあおりを受け撤退を余儀なくされた三越伊勢丹 <3099> など、記憶に新しい「大阪百貨店戦争」。一旦は落ち着いたように見えるが、「日本一の小売激戦区」とも揶揄される大阪では、今も実態は厳しい顧客争奪戦が展開されている。


外商部増強で高額商材に望みをつなぐ

百貨店は、好立地に店を構えれば、あとは待ちの商売と言われるが、現実はそうは行かない。そこで出番となるのは外商部だ。外商部は、都心型の百貨店ではどの店も100名は下らない陣容で、日々直接顧客訪問をする。また代々、大得意先として外商部員が日参し大切に育ててきた顧客は、一般店頭顧客に比べ、その百貨店の固定客となる傾向にある。

日々の営業活動は、食料品の配達からお中元、お歳暮の細々とした注文に対して効率を考えず、御用聞き的に走り回るが、絶対額を上げる方策は、やはり宝飾品、呉服、高級海外ブランドファッション、美術品を中心に店外の一流ホテルや料亭を貸し切り販売するいわゆる店外催しである。上位数パーセントの大得意先となると、1点数千万円の宝飾品、絵画を購入する。

実はこの地上部隊が"増強"されている。関西圏の百貨店関係者によると「70年代前半に大量入社した社員が定年前後となり、店頭から実額の取れる外商舞台へ配置換えをして効率をあげようとしている」というのだ。豊富な経験と商品知識を持ち、しかも主要顧客と同年代。各社でベテラン社員が今、顧客を他社に略奪されないよう歯止めをかけようとしている。

関西で「外商力」が強いとされているのは強大なブランド力を持つ大丸百貨店 <3086> と高島屋 <8233> である。数十年前からの「おつきあい」に支えられており、電鉄系の阪急、阪神、近鉄などの百貨店が両社の上得意先にアプローチするものの、よほどの理由がない限り顧客側が相手にしない。

ただ、大丸と高島屋も今の状態にあぐらをかいているわけではない。店外催しと組み合わせながら進めるのが、「ウェルカムデイ」キャンペーンだ。数日間、店舗そのものを高級催し会場に仕立て上げた後、品揃えを上得意先顧客用にシフトして外商部員全員で迎えるのだ。日頃、外出して店内にいることが稀である老練な外商部員が全員店内各所で待機するのだから、その光景はかなり目立つ。

これに対し、電鉄系百貨店の外商戦略は、「外商顧客の承認基準を下げすそ野を広げる」ことで対抗している。だがこの結果、既存外商顧客と一般カード顧客との特典差が小さくなるため、実質「ステータス感」で購買を喚起しようとしていようなものだ。