上記タイの有力企業3社の国際展開をまとめれば、以下のように整理できる(*20)。

(1)アセアン域内

アセアン経済統合など域内市場での機会を捉えた、他国での拠点構築や事業規模、事業領域の拡大を狙う「積極戦略」である。特に域内の大規模市場であるインドネシア、フィリピン、ベトナムや、経済発展が後発で今後の大きな伸びが期待されるカンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM諸国)が有力なターゲットになっている。

域内の金融・ビジネスセンターであるシンガポールへの投資も活発に行われている。CLMV等には地理的・文化的近接性による優位、タイ製品の相対的な高評価の優位(*21)を生かしている(TheNation(2015年3月30日付)等の報道による)。

(2)アセアン域外=他のアジアや欧米等を含む

CPグループによる大規模市場である中国(本土)への先行優位を狙った大規模な投資。中国(本土)への投資についてそのゲートウェイとも言える存在で、さらにシンガポールと並ぶ国際金融・ビジネスセンターである香港への投資も多い。

また、セントラルグループのイタリア・デンマーク・ドイツでのデパート買収、CPグループのベルギーの食品加工会社の買収などの事例のように、ブランド、技術・ノウハウの確保を目的とした先進市場への進出事例も増えつつある(*22)。

アセアンの企業は、今後アセアン経済統合などの進行の中で、他国の有力企業との競争が激しくなることが想定され、それに先んじて、自国市場における拠点や基盤を強化しようとする(攻めによる)「防衛戦略」がみられている。それに加えて、上述したセントラル・グループのように、隣国であるCLM諸国への進出に備えつつも、当面の投資リスクを抑えつつ、CLM諸国からの買い出し顧客による販売を増やそうという国境地帯へのデパートの出店は「準域内進出」ともいえる動きであることを認識しておきたい。