◆株主層(個人株主)拡大に対する取り組み
上場会社が上場を維持するには、株主数が一定数以上である必要がある。また、個人株主に安定株主としての役割を期待する動きもある。そこで、持合比率によって株主層の拡大に対する取り組みに差があるか確認した。
(1)株主優待
まず、株主優待に着目した。一般に、享受できる株主優待は保有株数に比例せず、小額投資家ほど有利な設計となっている。株主優待実施の目的は多岐に渡るが、株主優待を実施している企業は、実施していない企業に比べ個人株主の拡大を意識している可能性が高い。
そこで、持合比率の水準別に、株主優待を実施している企業(*2)の割合を調べた。持合比率が相対的に高い企業は、そうでない企業に比べ、株主優待実施割合が低い傾向があり(図表-3)、その統計的有意性も確認できた。
(2)情報開示(ウェブサイト)
次に、ウェブサイトにおける情報開示の充実度に着目した。ウェブサイトにおける情報開示が充実している企業ほど、個人株主を含む幅広い投資家を意識していることは、説明するまでも無い。
持合比率とウェブサイトの充実度ランク(*3)との関係を確認したところ、持合比率が相対的に高い企業は、そうでない企業に比べ、情報開示の充実度が低い(ランクが低い)企業の割合が高い傾向にあり(図表-4)、その統計的有意性も確認できた。
以上から、持合比率の高い企業ほど、個人株主の拡大に消極的であると解釈できる。その理由として、十分な安定株主の存在が考えられる。ならば、株式持ち合いの解消が進むと、株主優待実施企業が増加し、更にウェブサイトによる情報開示がより充実するかもしれない。