ねこ
(写真=PIXTA)

「大もちあいは大相場」とは、株価が大きく上がりも下がりもしない「もちあい相場」が長く続いた後に大きな相場が控えているという格言である。

もちあいが長く続くと市場は閑散とし、出来高が減り、相場の勢いが削がれる。相場が低迷すると、何とか利益を出そうとして信用売りを行う投資家が増加する。こうした信用売りの残高が十分に積み上がった状態になると、何かの拍子で相場が上昇に転じた時に、それまで低迷相場で売り疲れていた投資家が再び買い始める。次いで信用売りを持ち続けた売り手の買い戻しが加わり、相場が一気に上昇する、というわけだ。

歴史的には「信用売り」とセットで説明されることが多いこの格言だが、今の日経平均株価の動きについて考えるのであれば、デリバティブ「日経平均先物」の売りや、上場投資信託(ETF)「日経レバレッジ上場投信」〈1570〉の信用売り残の積み上がりを念頭に置いて読み替えてもらうといいだろう。


江戸時代から語り注がれる「閑散に売りなし」との関係

相場格言は長い歴史を持つものが多い。日本証券業協会がまとめている「相場格言集」によると、閑散とした相場が続く中で売り急ぐことを戒める言葉が、江戸時代の米相場の参加者の間でも語り継がれていたという「閑散に売りなし」だ。

「閑散に売りなし」は、相場が閑散としていても売り急ぐなということを意味する格言だ。これに対し、「大もちあいは大相場」という言葉は相場が上下するメカニズムを説明した中立的な意味合いがあり、「閑散に売りなし」よりも広い内容がある、という説がある。つまり、株価が高値を付けた後にもちあいになった場合に、多少の買いが入った程度ではかえって急落を招くことになるため追随買いはすべきではない、という意味も含まれているというわけだ。

ただ、何の説明もなく「大相場」という場合、普通は株価が上がり続ける「上げ相場」を想像する人が多いと思われる。この場合は「大もちあいは大相場」と「閑散に売りなし」はほぼ同じ意味となる。


アベノミクス相場でも「もちあい」

安倍政権が発足し株価の上昇基調が続いてきた「アベノミクス相場」でも、しばらくもちあいが続いた局面があった。例えば、13年6月から11月初旬までは、日経平均が1万4000円を挟んで上下1000円の幅で推移した。

この直前は、日経平均は12年秋の9000円前後から、13年5月の取引時間中に付けた戻り高値(1万5942円)まで急速に上昇し、株式市場では高値警戒感が強まった。ヘッジファンドとみられる大口の利益確定売りが出て、日経平均は1万6000円の手前から1万2000円台まで急落した。

市場関係者は安倍政権の経済政策(アベノミクス)の柱である「三本の矢」のうち、三本目に当たる「成長戦略」に目新しさがないと失望した。そして関係者の間には、株価はすでに高過ぎる水準にあるのではないかという冷めた見方が広がり、「ひと相場終わった」という空気が流れた。

ただ、証券会社のストラテジストなどの間では、上場企業の収益予想を考えると大幅に売り込まれる可能性は低いとの見方が比較的多かった。結果的には13年11月から再び地合いが強含みとなり、14年の1年間は1万4000円を割る場面はほとんどなく、相場の底値が切り上がった。同年秋には日銀が追加緩和を実施したことが起爆剤となり、相場は再び勢いを取り戻し、今年春には2万円を超えた。

2015年9月中旬の時点では、株式相場は中国経済への不安感を背景に不安定な動きが続き、日経平均は1万8000円付近まで切り下がっている。投機的な売りや買いが一巡し相場が落ち着きを取り戻すには、もう少し時間がかかるとみられる。「大もちあいは大相場」という格言が投資戦略に活用される場面が来るのは、もうしばらく先になりそうだ。 (ZUU online 編集部)

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