EUの新たな火種、シリア難民の受け入れ
欧州連合(EU)は9月14日、難民受け入れ問題に関する臨時の法相・内相理事会を開き、今後2年間で計16万人の難民を加盟国が分担して受け入れるという案を協議した。しかし、受け入れの義務化に反対する国も多く、合意には至らなかったという。
シリアなど中東地域の内戦を逃れて欧州を目指す難民の流れはここ数年急速に膨張し、途上で起こる様々な悲劇とともに世界中の注目を集めている。アメリカやオーストラリアは最近それぞれ1万人レベルの受け入れを表明したが、すでに数十万人が押し寄せている欧州にとってさらなる難民受け入れは容易ではない。メルケル首相がきわめて積極的に寛容な受け入れ姿勢を言明したドイツ、しぶしぶ付き合っている形の英仏、そんな余裕はないと難色を示すハンガリー・チェコなどの東欧諸国——。難民問題はEUにとってギリシャの債務問題をも上回る新たな火種となっているのだ。
世界に約6000万人の「難民」問題とは何か
そもそも「難民」とは、国際法上の厳密な定義はともかく、一般には内戦や治安悪化などによって故国を追われた「政治難民」をさす。
約150カ国が加盟する「難民条約」を通じて、こうした人達に対する救済・支援は国際社会の義務となっている。近年は自国内に留まっている「国内避難民」もその対象とみなされることが多い。
難民問題に普遍的に対処するための国際機関として1950年に設置された国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のデータによると、2014年末時点で世界の難民総数は5950万人、このうち約2000万人が母国を離れ他国に逃れ、約4000万人が自国にとどまって避難生活を送っていると言われる。出身国別難民数では、2014年末、それまで長年首位を続けていたアフガニスタンを抜いてシリア(388万人)が最多の難民発生国となった。その数は今も増え続けている。