そして、このIPOが過去に例のない親会社と子会社を含めた3社同時の新規上場であることが注目度を上げている。親子上場とは、ある会社の支配権を持つ親会社とその親会社に支配される子会社が同時に上場していることを指すのだが、今回のケースでは日本郵政がゆうちょ銀行とかんぽ生命の株を保有しているという親子関係のままで、3社が同時に新規上場される。

一般の投資家には無関係のように思えるが、親子上場に対する批判は従来からあり、様々な問題が指摘されている。最近の批判の焦点となっているのは親会社と子会社との間に存在する利益相反の問題だ。親会社が子会社に不利な取引条件を強要すれば、本来は子会社が得る利益を親会社に付け替えることになる。

子会社が上場しており、親会社以外の少数株主が存在する場合には子会社の少数株主にとっては本来得られるはずの利益が親会社に移転されたこととなる。

上場後もゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式の50%以上を保有する日本郵政は、間違いなく、この2社の親会社ということになる。つまり、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の少数株主と親会社である日本郵政との間には利益相反が生じる可能性があるのだ。したがって、子会社の上場にあたってはその事業が親会社に依存すること無く、独立した事業運営が可能であることが重要となる。

郵政グループ3社の事業形態はどのようになっているだろう。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、貯金や保険販売などの窓口業務を日本郵便に委託しており、日本郵便は15年3月期にこの2社から9600億円の手数料収入を計上している。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は商品販売を郵便局に依存するという構造となっているからだ。

このようにこのIPOは単に注目度や規模に注目するだけでなく、親会社と子会社の同時上場により、親会社と子会社少数株主の利害対立という問題を生み出すことになりかねないということに注意すべきなのだ。

国策銘柄の上場に向けて個人投資家はおおむね肯定的にことの成り行きを見守っているようだ。しかし、現在のマーケット環境は必ずしも楽観的とはいえない。今世紀最大の国策IPOは果たしてマーケットの起爆剤となり、相場を勢いづかせることができるだろうか。(ZUU online 編集部)

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