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2014年2月から米FRBを統率するジャネット・イエレン氏。氏の登板によって米国は、そして新興国経済はどう変化するのでしょう。


イエレンFRB議長誕生

2014年1月6日、米上院はオバマ大統領の指名を受けたジャネット・イエレン氏を次期FRB(連邦準備制度理事会)議長として承認しました。FRBの議長はイエレン氏で15代目となります。100年に及ぶFRS(連邦準備制度)の歴史上、初の女性議長でもあります。

2014年1月のFOMC(連邦公開市場委員会)を最後に前任のベン・バーナンキ議長は退任し、2月からはイエレン体制がスタートしました。任期は2018年2月3日まで。この間、米国金融の舵取りと正常化を任されることになります。 「学者は理想の世界に生きている」、「実務能力に疑問がある」、などという言葉はイエレン氏にとっては無用です。サンフランシスコ連銀総裁を6年間務め、続く4年間FRB副議長を務め上げた氏の実務能力は折り紙つきです。

イエレン氏の金融知識と実務能力の高さとは裏腹に、上院の採決結果は賛成票65,反対票26。過去最低であったベン・バーナンキ前議長の支持率を下回る結果となり、決して順風満帆とは言えない船出となりました。 副議長にスタンレー・フィッシャー前イスラエル中銀総裁が就任したことも、未来を読む上での不透明性に一役買っています。 フィッシャー氏は、FRBの推し進めているフォワードガイダンスに懐疑的であり、バーナンキ前議長やマリオ・ドラギECB総裁も師事した"大物"です。イエレン議長よりも年配であるフィッシャー氏の影響力について、現状では不透明と言わざるを得ません。フィッシャー氏を指名したオバマ大統領の人事能力に懸念を抱かせることとなれば、イエレン氏の指名についても疑念を抱かせる懸念を持たれかねません。

前途に横たわる困難の中、世界金融の中心を任される新議長は、かつてない重責を担っています。


①既に発揮された経済への影響力

これまでにもイエレン氏は2010年10月よりFRB副議長として、マーケットに大きな影響力を揮ってきました。

2013年11月14日、ベン・バーナンキFRB議長の後任指名を受け、上院公聴会で雇用の現状について「米国の潜在力には遠く及ばない」と発言した途端、ドル高が加速した経緯があります。FRBが遂行中のQEについても「コストより、利点が勝る」の延べたため、QE踏襲路線であると再確認できたことも影響しています。

これらの発言を受け、市場では金融緩和の継続を示唆していると判断。発言当初1ドル98円程度であった為替レートは、わずか2ヶ月間で105円台にまで上昇しました。 市場の要求とマッチし、不透明感を払拭した「ミニ・イエレン・プット」であったとも言え、率にして実に7%もドル高が進行するほどの影響力を見せました。


②雇用問題の専門化

ジャネット・イエレン氏は雇用と失業問題の専門家でもあります。

イェール大学ではノーベル経済学賞の受賞者であるジェームズ・トービン教授に師事し、1971年には経済学の博士号であるPh.D.を取得しています。 経済学者として、「私にとって失業率は単なる統計数字ではない」と語り、失業と社会的コストについて最も多くの研究時間を費やしています。イエレン氏は、「中央銀行は失業率の低下に貢献できる」というトービン師の影響を大きく受けており、まさに実践によって理論を証明する機会が巡ってきたと言えます。

バーナンキ議長がマクロ経済の専門化であったことから、マクロ経済の動きを示す指標をFRBが最も重視すると考えられてきました。雇用統計や失業率も確かにその一つですが、イエレン議長に変わった事で、これまで以上に雇用統計や失業率を重視することは想像に難くありません。