③金融緩和はいつまで続くか

ハト派であり、バーナンキ路線を踏襲するイエレン氏は、バーナンキ前議長以上に金利の引き上げに慎重である可能性あります。

副議長として臨んだ2014年1月のFOMCでは「失業率が6.5%を下回ってから相当の時間経過後もゼロ金利を維持することが適切である」と延べています。失業率が6.7%まで低下している現在、この発言によってこれまでFRBのフォワードガイダンスであった「失業率6.5%」を有名無実化させました。 イエレンFRBの統制する米国金融においては、雇用の回復が相当に進まなければゼロ金利は解除されないという確証が得られたと言えます。 量的緩和(QE)についても「コストよりも利点が勝る」と述べており、QEそのものを忌諱してはいません。「コストよりも利点が勝る」限り、QEは継続さ れると見るべきでしょう。但し、頭に「米国にとって」と付く事を忘れてはなりません。


④米国が新興国に与える影響

イエレン氏は2013年4月のある会合で、「決して説明しない、決して弁明しないという日々は永遠に消え去ったと願っている」と延べており、対話と強調を重視している姿勢が伺えます。市場とのコミュニケーションは良好で、市場とのコミュニケーションを図る「イエレン委員会」があったほどです。 米国内での協調性に問題は無いとして、米国と諸外国との協調性にはどのような影響があるのでしょう。

新興国にとって、今回の議長交代は歓迎されるべきかも知れません。これまで以上に緩和縮小に慎重な姿勢を堅持すると見られるからです。新興国にとっての米国の緩和縮小とは、自国へ投下されていた投資資金が米国へ回帰してしまうことです。 新興国は、インフレと自国通貨安対策のため、これまで以上の利上げ圧力に晒される事になります。

しかし、FRBはあくまで米連銀の中央組織。2014年1月のFOMCでも、新興国についての言及が殆ど無いことからも、米国にとって利ありと見れば緩和縮小に躊躇いはないでしょう。事実、1月末のFOMCではイエレン副議長を含む全員一致でテーパリング縮小を議決しています。 新興国経済の落ち込みが米国経済を直撃しない限り、新興国は自力での対応を迫られることになります。新興国のみならず、米国経済が正常化するのに伴う痛みに、世界は翻弄されることになります。


米国主導経済は続くか

第二の基軸通貨の座を狙う人民元は、中国経済の落ち込みと中国という国の不透明さにより、自沈していきました。現在、基軸通貨である米国ドルの座を脅かす存在はありません。 イエレン議長の代も、「米国経済の発展が世界経済の発展に繋がる」との姿勢に変化はありません。

米国主導は続きます。しかし、米国抜きでの経済圏を確立しようという動きは、今後も加速するでしょう。

BY inu_poo:投資歴8年の個人投資家が経済ニュースをキュレーションします。

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