○新議長が狙うもの、意識するもの

イエレン議長はバーナンキ路線を踏襲するとするとしていますが、出口政策一辺倒ということでもない慎重な姿勢もみせています。米国の失業率は1月に6.6%まで低下していますが、失業率の低下は職探しを諦める人の増加が原因で、雇用創出の結果ではないという指摘もあり、「フルタイムで働きたいのにパートタイムを余儀なくさせれている労働者数は非常に多い」と、長期失業や労働参加率低下などの米国の労働市場の構造問題をかねてから重視するイエレン議長らしい危機感を見せています。

イエレン議長が就任前の1月米労働総同盟産別会議(AFL・CIO)で行った講演で、米国内の貧困や長期失業の深刻さについて数字を示した上で、「私にとっては、これは単なる統計ではない。長期失業は労働者とその家族にとっては破壊的な影響を及ぼす」「労働者の健康を精神面、肉体面からむしばみ、結婚生活や子供にも過酷な状況をもたらす」と述べていることからも失業問題への関心の高さが窺えます。。


○株式市場緩への影響

議会下院証言で「米国経済の緩やかな回復が続くと予想している」など、先行きに楽観的な見通しを示した事ことを受け、NYダウは2013年の年末につけた史上最高値に迫りました。好調な企業決算とFRBのイエレン新議長が従来の金融政策を確認したことが、1月下旬から市場を覆っていた米国の経済成長に対する懸念を吹き飛ばしたようですが、先行き不安が解消したとは言えず、一本調子の上昇を期待するのは難しいようです。


○イエレン議長の今後の課題

失業率を基準に緩和を続ける時期を約束するなど透明性を高める工夫をしてきた流れを一転して、旧来型の総合判断に逆戻りしようとしているようにも解釈される発言もしています。限界が指摘されている対話手法の見直しや新しい基準値の設定も含めてイエレン議長の大きな課題になるのではと見られています。

イエレン議長の任期は4年ですが、任期後半には大統選挙があります。一頃の人気はなくなり支持率が大きく低下したオバマ大統領ですが、任期後半には選挙を意識した景気対策が求められる可能性も意識しておかなければなりません。現在進行中の緩和縮小への影響の可能性も考慮しておきたいところです。

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