③「市場シェア2割」を守れるか
統合によって財務は強化され、国際競争力は確実に増すでしょう。三菱重工では原動機部門は2012年で底を打ち、2014年は前年比+40%近い成長を実現出来ると見ています。
シェールガス革命は、新会社にとって追い風です。安価なLPGの生産拡大により、電化される地域が拡大し火力プラントの需要も増加する事は想像に難くありません。ですが、それは競合であるGEやシーメンスにとっても同じです。シェア2割を守るには少なくとも競合他社に匹敵する受注が必要です。
ですが、IGCCやGTCC(ガスタービンコンバインドサイクル発電)の分野において、世界トップレベルの技術を擁する2社の統合がスムーズに行われるなら、シェア2割維持、さらには拡大も視野に入ります。
統合後の未来
火力発電事業で先行する2社は、営業利益率が10%を超えています。シェアを競う関係にある以上、営業利益率の低さは資金効率が悪いからなどという単純な話では済みません。経営資源の量か質、あるいは両方が劣ることにも繋がる事実であり、成長スピードも劣るということに繋がります。新会社の今後を占う上で、営業利益率向上がどこまで実現出来るかが鍵です。
統合が2社の親会社に与える影響についても見ておきましょう。
三菱重工本体にとってプラスとなるのは、日立を通じてGEが握っていたシェアが新会社に還流される点です。新会社の損益は三菱重工業と連結しているため、新会社にとってのプラスは三菱重工にとってもプラスです。
一方の日立製作所に対する影響は、短期的には火力発電事業が連結から外れた事による売上高減少となって現れます。ですが、長期的に見れば三菱重工業の大型ガスタービン技術や品質管理技術が手に入ることになります。
国内6箇所で蒸気タービントラブルを抱える日立にとっては、問題を新会社に”丸投げ”できると共に、三菱重工の力を借りることで解決や品質向上の糸口を掴めます。
シェア獲得とはセールス競争です。技術のみに傾倒し、セールスを疎かにしてはルネサスなどの二の舞いを演じることになります。
photo: 三菱日立パワーシステムズHP