おわりに~スケジュールなど

5月以降、順次公表された仕様書に従って、各年金基金での作業が行なわれた後、8月に各国監督当局に結果が提出された。スケジュール通りだと現在(9月)は、各国から提出されたデータを、EIOPA内で集計・評価を行なっている段階にある。

ストレステストの結果については12月に公表予定としているが、定量調査の結果公表についての言及はない。これらの結果を踏まえて、EIOPAは、2016年3月にEU委員会に対して、年金基金の健全性規制に関する提言を行なう予定になっている。

ソルベンシーⅡの年金基金版ということで、ソルベンシーⅡと同じように、経済価値ベースで年金基金のバランスシートを作ってみて、純資産が必要資本を上回るか否か、という見方をすることになる。しかしながら、年金基金の場合、これまでの議論にもあるように、いざとなれば、必ずスポンサー企業の財政的な支援があるように思われる。

この点、保険会社のように自己完結的な財務状態ではないものを評価する難しさがある。それをどう数値化していくか、あるいは支援基準をどう設定していくかなどが、問題となるだろう。これが、保険会社に対するソルベンシーⅡとは、最も異なる点かもしれない。保険会社に対するソルベンシーⅡとともに、年金基金に対する今後のこうした動きに注目していきたい。

(*1)前回調査の概要については、年金基金の健全性規制の動向 欧州で行なわれている定量的調査の概要(2012.11.26 保険年金フォーカス)も参照
(*2)欧州年金基金の健全性規制 定量的影響度調査の結果速報 (保険年金フォーカス 2013.5.28)
(*3)Consultation Paper on Further Work on Solvency of IORPs (EIOPA 2014.10.13)
(*4)EIOPA プレスリリース
(*5)IORP Stress Test 2015 Specifications (EIOPA 2015.5.11)
(*6)Technical Specifications Quantitative Assessment of Further Work on Solvency of IORPs (EIOPA 2015.5.11)

安井義浩
ニッセイ基礎研究所 保険研究部

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