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(写真=PIXTA)

「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」が 2015年7月、 ユネスコの世界遺産リストに正式登録され、大きなニュースとなった。炭鉱、製鉄・鉄鋼業、造船など、我が国で飛躍的に発展を遂げた幕末1850年代から明治末期1910年までの産業遺産群が、歴史を物語る重要な建築物として認められた形だ。

構成資産は、萩(山口県)、鹿児島(鹿児島県)、佐賀(佐賀県)、長崎(長崎県)、三池(福岡県・熊本県)、八幡(福岡県)、そして韮山(静岡県)、釜石(岩手県)の8エリアに点在する23資産とじつにスケールの大きな世界遺産だ。今回は、山口県、そして九州5県で登録された構成資産に絞ってご紹介していこう。


吉田松陰による松下村塾発祥の地――山口県・萩

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(写真=PIXTA)

萩市では吉田松陰が主宰し幕末・維新の志士を数多く輩出した私塾「松下村塾」をはじめ、鉄製大砲の鋳造のための「萩反射炉」、長州藩が最初の洋式軍艦「丙申丸」を建造した「恵美須ヶ鼻造船所跡」、「萩城下町」、そして「大板山たたら製鉄遺跡」の5つが登録された。

「大板山たたら製鉄遺跡」は、江戸時代の中・後期に操業していた製鉄所跡で、ここで伝統的技法によって生産された鉄が長州藩の洋式軍艦建造に使われたといい、自力による近代化の証として貴重な存在だ。国の史跡にも登録されており、炉、天秤ふいごなどの遺構が良好な状態で保存されている。


富国強兵を担った日本初の工業地――鹿児島県

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(写真=PIXTA)

今回登録の「旧集成館」は、薩摩藩主島津斉彬が欧米列強による植民地化を防ぎ、富国強兵を実践しようと、1851年に大砲鋳造や造船、紡績などの産業を興した工場群。日本で最初の工業地帯と言われる。1863年の薩英戦争、1877年の西南戦争で攻撃を受け、1915年に廃止された。

今回登録されたのは「旧集成館反射炉跡」「旧集成館機械工場」「旧鹿児島紡績所技師館」の3つ。鹿児島市では、集成館事業に使う白炭を製造した「寺山炭窯跡」、集成館の水車に水を供給した「関吉の疎水溝」も登録された。


佐賀藩の海軍教育施設の発祥地――佐賀県

佐賀からは「三重津海軍所跡」が登録。1853に幕府が大船製造の禁を解いたため、佐賀藩が独自の海軍教育施設を開いたのが発祥で、蒸気船造船や修理のための乾船渠(ドライドック)などの施設を建設した。1865年、ここで日本初の実用蒸気船「凌風丸」が建造された。現在は佐野歴史公園となっている。


最も注目された無人島、軍艦島――長崎県

今回の世界遺産登録でもっとも注目されたのは「端島炭鉱」だろう。長崎港から南西約17.5キロに浮かぶ6.51ヘクタールの島で、通称「軍艦島」。1870年に石炭の採掘が始められ、1890年には、今回同じく登録された「高島炭鉱」とともに三菱の所有となった。

もともとは南北約320メートル、東西約120メートルしかなかったが、幾度もの埋め立て工事によって約3倍の面積となり、働く人々や家族のために高層鉄筋アパートや学校、病院などが建てられ、最盛期には5000人超の人たちが生活した。石炭から石油への転換によって1974年に閉山し、無人島となっている。

今回長崎県で登録されたのは、三菱長崎造船所の「第三船渠」、「ジャイアント・完治レーバークレーン」、「旧木型場」、「占勝閣」そして「旧グラバー住宅」など計8資産だ。


戦後まで日本の近代化を牽引し続けた炭鉱――三池(福岡・熊本県)

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(写真=PIXTA)

福岡県大牟田市と熊本県荒尾市にまたがる三池炭鉱は、1873年操業、明治から大正、昭和の戦後まで日本の近代化を牽引し続けた。今回は「三池炭鉱、三池港」として登録された。大牟田市の三池炭鉱の「宮原坑」は1898年に第一堅坑、1901年に第二堅坑が完成。

両市にまたがる「万田坑」、石炭や資材の運搬のために炭鉱から三池港までを結んだ「炭鉱専用鉄道敷跡」、1908年竣工で今も現役で稼働する「三池港」が資産として認定された。

このエリアからもう一つ登録された「三角西(旧)港」は、三池港ができる前の石炭積出港として栄えた。


北九州工業地帯としての目覚ましい活躍――八幡(福岡県)

もう1エリア、福岡県で登録されたのは、官営八幡製鐵所関連施設。明治20年代、鉄鋼需要が急増したため、日本最大の石炭産出量を誇っていた筑豊炭田に隣接するこの地に製鉄所が設置されることになった。

三度の拡張工事を経て生産が大幅に拡大、北九州工業地帯として日本の近代化における重工業化を果たした。所内からは「旧本事務所」、「修繕工場」、「旧鍛冶工場」、そして現在も製鉄所への送水を担う「遠賀川水源地ポンプ室」が登録されている。(ZUU online 編集部)

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