可能性が高いのは5月8日
株主の立場からは、できるだけ公表日前1カ月間の株価ができるだけ高くなってほしいところである。最も有利なのは4月3日(3月3日~4月2日の市場株価平均は495.4円)なのだが、4月3日の時点では特別委員会の設置を公表しただけで、不適切会計事件の全貌は全くわかっていなかった。この時点では、工事進行基準に関する会計処理の問題にすぎず、これほどの大問題に発展するとは考えられていなかった。
そこで、インパクトの大きさなどから「公表日」は5月8日とされる可能性が高いと予想できる。5月8日に2014年度業績予想を未定と発表したことによって、問題の深刻さがマーケットに大きな衝撃を与え、ストップ安(当日終値483.3円→翌日終値403.3円)となった。「公表日」が5月8日とされた場合、「公表日前1カ月間の市場株価の平均額」は4月8日~5月7日の市場株価平均485.0円となる。
「公表日後」をどうとらえるか
一方、「公表日後1カ月間の市場株価の平均額」の算出は、さらに難しい。もし5月8日が公表日なら、単純計算では5月9日~6月8日の市場株価平均424.0円となるのだが、決算修正額はその後も順次拡大修正された。5月9日~6月8日の市場株価平均が不適切会計を反映した適正な価格であるとは、株主の立場からは到底認められないだろう。
そこで株主の立場としては、最終的にマイナス額が確定したと思われる9月7日以降を「公表日後1カ月間」として主張したいところである(9月8日~10月7日の市場株価平均は315.0円)。「公表日」を特定の日と捉えず、5月8日から9月7日まで4カ月かけて公表されたと考えるのである。
以上を踏まえると、推定損害額として認定される額は最大で1株あたり170円(485.0円-315.0円)程度となる。「公表日」を5月8日と限定した場合でも61円(485.0円-424.0円)は認められることになるだろう。
なお、損害賠償請求する株主は5月8日時点で株主であった必要がある。また、その後途中売却するなどして、上記より低い損害額で抑えることができた株主については、当該株主の損害額を上限として推定損害額が認定されることになる。