ライブドア、オリンパスのケース

最後に問題になるのは、虚偽記載以外によって生じた株価の下落についてどの程度減額されるのかということだ。こうして株価下落をもたらす虚偽記載以外の要因のことを、「以外要因」と呼ぶ。

例えば、ライブドア事件の大阪地裁判決では、ライブドアマーケティング(旧バリュークリックジャパン)が、すでに買収済みであったマネーライフを完全子会社化したという旨の虚偽の事実を公表した。これが株価下落の「以外要因」とみなされ、推定損害額から1割が減額された。

オリンパス事件の大阪地裁判決では、①本業が順調であって高い技術力を有する優良企業であると認識されていた②虚偽記載が被告の本業での利益水準や業績動向に基づく市場の評価を誤らせるようなものではなかった③虚偽記載の内容や規模に加えてウッドフォード氏の解職が大衆の関心を惹くものであった―—ことも相まって株価が大きく下落したことなどを株価下落の「以外要因」として、推定損害額から2割を減額した。


チャイナ・ショックの影響

東芝のケースでは、4月3日~9月7日の期間、上記2例のような「以外要因」は見当たらないものと思われる。しかし、8月以降のチャイナ・ショックの影響は難しい問題だ。5月8日から9月7日にかけてTOPIXおよび日経平均株価は9%程度それぞれ下落している。これに市場感応度(β値)を掛け合わせたものは「以外要因」による下落であり、損害額から減額されるべきであるとして、裁判所において争われることになる可能性がある。

最近の株価算定に関する裁判ではマーケットモデルにより市場株価を補正して推定株価を算定するケースが増加している(インテリジェンス事件東京高裁決定など)。東芝のケースでも、不適切会計がなかった場合の株価をマーケットモデルを使用して推定するという手法が、原被告双方から主張・立証され、「以外要因」による下落の有無が争われることになるのではないだろうか。

仮に9月8日~10月7日の市場株価平均を「公表日後1カ月間の市場株価の平均額」ととらえた場合には、「公表日」を5月8日~9月7日と長くとらえることの代償として、5~20%程度の「以外要因」による減額が認められることになると予想する。


取り戻せる額は1株当たり136~161.5円と予想

結論としては、5月8日時点で東芝株を保有し、途中売却していない株主が取り戻せる金額は1株あたり136~161.5円と予想する。推定損害額が1株あたり170円で、そこから5~20%程度の「以外要因」による減額がされると計算した。なお、株主が実際に受け取れる金額は、ここから弁護士費用や印紙代・切手代その他の実費を差し引いた金額となる。(ZUU online 編集部)

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