若手漫画家のための「トキワ荘プロジェクト」

ソムリエ勤務、ダイエット…「コンセプト型賃貸」運営の苦労とは
(写真=京都版トキワ荘事業事務局)

トキワ荘とは、1952年〜1982年に東京都豊島区に存在した木造アパートのことである。手塚治虫や赤塚不二夫、寺田ヒロオなど著名な漫画家が居住していたことで有名だ。寺田ヒロオの「空いた部屋には若い同志を入れ、ここを新人漫画家の共同の場にしていきたい、切磋琢磨できる環境をつくりたい」という思いもあり、トキワ荘からは多数の一流漫画家が世に出ることになった。

このような場所を目指しているのが2006年に始まった「トキワ荘プロジェクト」である。特定非営利活動法人NEWVERY(ニューベリー)が東京近郊、同法人と株式会社めいが京都市内でシェアハウスを低家賃で提供している。

入居対象者は「本気で漫画家になりたいと考えている若者」で、入居期間は「3年をめど」としている。年齢は高卒以上〜30歳くらいまでと年齢制限もある。漫画家向けの講習会、漫画関係の仕事先の紹介、デビューに向けての目標設定やコーチングなど漫画家に向けてのサポートが提供される。月1回、同じ漫画家という夢を持った同志と情報交換もできる全荘合同懇親会も開催されている。

漫画家の卵時代はアルバイトなどの別収入がないと厳しい。このプロジェクトには、本気でプロの漫画家を目指す若者がアルバイトの時間を減らして本業に専念し、いち早くプロとなれるようにとの願いが込められている。トキワ荘から多くの一流漫画家が生まれたように、高レベルで切磋琢磨できる環境を目指し毎年漫画家が輩出されているようだ。


コンセプト型賃貸の苦労

こうしたコンセプト型賃貸が必ずしも満室続きというわけではない。京都版トキワ荘管理人の日下部淑世さんは「私たちは入居者が多少集まらなくても社会的ミッションを達成するためなので大丈夫ですが、収益を目指す場合は途中でコンセプトがブレる可能性もあるのではないでしょうか」と話す。京都版では漫画家としての活動を支援するだけでなく、他の職業の人が集まるシェアハウスとの交流も行っており、「漫画家の卵」たちが漫画家以外の職業も視野に入れて進路を模索できるよう工夫している。

単に「住む」以上の価値を生むことはもちろん、地域の特性や住民のニーズに合わせ時にはコンセプトを柔軟に変えていくことがコンセプト型賃貸の経営には大切であるようだ。(ZUU online 編集部)

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