家賃増額
(写真=PIXTA)

東京のオフィス・住宅賃料がじわりと上昇を見せている。大手賃貸仲介会社である三鬼商事によると、2015年9月時点の東京ビジネス地区の平均賃料は1万7594円/坪で前年同月比4.70%、前月比0.59%となっており、オフィス賃料の上昇がわかる。また、東京カンテイも2015年9月時点の分譲マンションの賃料を発表しており、首都圏では前月比+2.2%の2647円/㎡、東京都では4ヶ月連続の上昇で前月比+0.2%の3182円/㎡となっている。

ただし、すでに入居者が入っているオフィスやマンションの場合、不動産のオーナーが賃料上昇の恩恵を受けるためには、現行の賃料を上げなければならない。賃上げ交渉の際、成功の鍵は周辺事例の入念な調査が握っている。そこで以下では、賃上げ交渉をどのように行っていくべきなのか、その基本について解説していく。


申出のタイミングはいつがいいのか?

良く勘違いされるのが、賃料増額の申入れは更新のタイミングの時でしかできないという思い込みだ。それでは、いつの時点で賃料増額の申入れができるのだろうか。借地借家法第32条には「借賃増減請求権」というのが定められている。そこには、「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる」と定められている。

つまり、更新の時期に限らず、今貸している賃料と周りの相場とが乖離している場合は、いつでも増額請求できるという定めになっている。逆に言えば、賃料の減額請求もいつでも可能ということになる。ただし、つい最近更新したばかりなのに、増減請求をすることは、道義的に望ましくない。更新と言うのは、ある意味、今の賃料でお互い納得した証になっているからだ。


すぐに次のテナントが入るかの見極めも必要

次に、テナントをすぐにでも埋めることができるという自信と、現行賃料が相場賃料と比較して低いという両方が兼ね備わったタイミングで賃上げ交渉に臨むのがベストだ。

仮に、テナントが増額要求を嫌になって退去してしまった場合に、すぐに今のテナントに貸している賃料よりも高い賃料で埋まるかどうかを見極める必要がある。都内は全体的に賃料が上がっていても、周辺の同じようなビルがガラガラの場合は、今のテナントに出ていかれたら、逆に空室を発生させてしまうことになるため注意が必要だ。


賃料が低いことは立退きの理由とならない

また、オーナーは、今のテナント賃料が低いからと言って退去まではさせられないという前提で賃上げ交渉に臨む必要がある。これは借地借家法第28条で定められており、賃貸人からの解約の申入れには正当の事由が必要とされている。たまに賃貸人からも6か月前に解約予告をすれば解約できるという条項を結んでいる契約書を見かけるが、このように借家人に不利な条項は実際には無効となる。


交渉前の十分な準備がポイント

仮に賃借人が要望賃料にノーと言えば、現行賃料を払い続けて法定更新されることもあり得る。そのため賃上げ交渉は慎重に行う必要がある。一番良いのは、周辺の賃貸事例を収集して、客観的に今の賃料が低すぎるということをテナントに納得させることだ。テナントも周辺の賃料はもっと高いということが分かれば、引っ越すよりもある程度の賃上げ要望を応諾するということになるだろう。

賃貸人からの賃上げの最終的な落としどころは、概ね現行賃料と相場賃料との中間地点と言われている。賃貸人側に実質的な解約権はないため、相場賃料まで満額回答させるのは難しい。中間地点まで上げることができれば賃上げ交渉としては合格点だろう。 (ZUU online 編集部)

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