採用側の気持ちを見抜いて利用すればいい

もちろん、「履歴書はデジタルデータで十分」だとする企業も数多く存在している。両者の違いは、今のところ業種や企業環境によるところが大きいように思える。

人事コンサルタントの増沢隆太氏は「『手書き履歴書で人柄がわかる』という勘違いへの対策」といった記事を公開、自身も手書きで履歴書を書くことがあるとしたうえで、「手書きで履歴書を書くのが正しいからではなく、自分が採用されるチャンスを拡大するためという目的ととらえ、手書き履歴書を好むであろう相手の求めそうなことを、履歴書記入でも徹底的に追及するのです」などとまとめている。

履歴書が必要な就職活動も、新卒学生とアラフォーの転職とでは求められるものは違うだろう。特に転職活動の場合は履歴書よりも職務経歴書のほうが重要なはずだ。

だが日本では「中途」採用という言葉があるように、まだまだ新卒の活動がいわゆる就職活動の基本でもある。社会経験のない学生向けのマニュアル本に「手書きが好印象」と書かれていれば、それに従ってしまうだろう。たとえ「おかしいのでは?」と思っても、なかなか他人と違うことをするリスクが取れる学生は多くない。それは、就活生のほとんどが、見分けのつかない似通った格好(リクルートスーツ)で活動していることからも分かる。

言われた通りにするのではなく

また求職者が「採用してもらう」側で、求人企業が「採用する」側であるのが実態で、相互の力関係が本来あるべき姿よりもいびつになりがちなこと、就転職活動が対等な“マッチング”とは到底いえない現実も否めない。

手書きか否か。現在のところその判断は、古くからの日本人としての意識や、企業・採用担当者の価値観に委ねられている。

昨今、こうした論争がネット上で可視化された割には、実態が一昔前と比べて大きく変わったようには思えないが、社会が動きつつあることも間違いない。

昔からのやり方やマニュアル本に書かれたことを、うのみにするのではなく「自分で考えて行動しよう」と決めることが、悔いのない就転職活動の第一歩なのかもしれない。 (ZUU online 編集部)