五郎丸ポーズが社会現象化している―。

キックの前に見せる独特のルーティンと成功率の高さで注目を集める、ラグビー日本代表FBの五郎丸歩選手。W杯イングランド大会以降も、その人気はとどまるところを知らない。連日のようにメディアに顔を出し、プロ野球日本シリーズでは始球式を務めた。CM出演依頼に加えて、静岡県浜松市動物園のキリンの赤ちゃんの名前が「ゴロウマル」に決まったというオマケ付きだ。


バブル崩壊で企業スポーツの廃止相次ぐ

五郎丸選手が所属するチームはヤマハ発動機ジュビロだ。10月30日に行われた東芝ブレイブルーパスとの練習試合には、平日にもかかわらず3000人の観客が訪れた。当初は練習試合ということで300人収容のヤマハ発動機のグラウンドを予定していたが、急きょ8000人収容の遠州灘海浜公園に変更したという。また、トップリーグ初戦となるトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦のチケットも完売するなどその人気はとどまることを知らない。

このようにラグビー日本代表の大活躍で、にわかに注目される企業スポーツだが、バブル崩壊以降、多くの有力企業が撤退した。ヱスビー食品 <2805> 陸上競技部、女子サッカーのTASAKI <7968> 、パナソニック <6752> のバスケットボール部、四国電力 <9507> 陸上部、日産自動車 <7201> 硬式野球部など数え上げればキリがない。スキージャンプの葛西紀明選手も、今は土屋ホールディングス <1840> 傘下の土屋ホームに所属して競技を続けているが、かつてのチーム地崎工業(現・岩田地崎建設)やマイカル(現・イオンリテール)は相次いで廃部を余儀なくされている。


背景には企業戦略のグローバル化も

では、企業がスポーツ活動から撤退するのはなぜか。「経営状態の悪化」「リストラの一環」はもちろん大きな要因だが、それだけではなく企業戦略の変化も指摘される。企業が運動部を保有するのは「従業員の連帯・士気高揚」と「企業イメージのアップ・宣伝」が目的の二本柱とされる。チームの維持費は広告宣伝費と福利厚生費になる。メディアへの露出が多くなれば、費用対効果から見て十分な意味を持つが、スポーツの場合、世界的な大会で活躍するなど結果が出ないとメディアの取り上げ方も小さくなってしまう。

また企業経営のグローバル化もスポーツ活動からの撤退の要因になっている。いわゆる「物言う株主」の存在も大きい。チームを保有する意義、投下資本に見合うだけの効果が得られているのか、株主にとって不利益ではないか、などの声に数字で答えるのが難しいことも事実だ。株主への利益配分と企業チームの保有は相反するところもあるといえよう。