老後の資産運用

(写真=PIXTA)

先行き不透明な経済状況、破綻寸前といわれる年金制度など、老後を取り巻く環境は決して明るいとはいえない。「老後難民」や「老後破産」に陥らないためには現役でバリバリ働けるうちからしっかり資産を運用したい。

年金だけでは老後の生活を維持できない

老後に不安を感じている人は多い。内閣府が平成 27 年 6月から7月にかけて行った「国民生活に関する世論調査」では55.7%もの人が老後の生活設計について悩みや不安を感じていると答えている。

40代ともなれば「老後不安」や「長生きリスク」が、より現実的な問題となってくるのではないだろうか。豊かな老後を過ごすには、それなりの資金が必要となる。

先行きの見えない年金だけでは不十分なので、年金を補完する資金を準備しなければならない。老後資金については「最低3000万円」などとよく言われるが、一般的なサラリーマンがこれだけの金額を用意するのは決して容易ではない。実際にいくら必要かは個人の生活スタイルによるところも大きいので一概にはいえないが、生計を維持できるだけの資金がなければ「老後難民」となってしまう可能性が大きい。

余裕のある老後を送るためにも、定年を迎えるまでにできるだけ資産を増やしておきたい。

資産運用を行うことで老後資金を地道に増やす

超低金利時代の今、ただ貯金しているだけではなかなか資産は増えてくれない。現在40代とすれば定年まで20年程度。この期間の中で効率的に資産を増やすには、適切な資産運用がポイントとなる。サラリーマンの老後資金は資産運用をしているか、いないかで大きな差がでる可能性もあるだけに前向きに検討したい。

資産運用の方法には、株式や債券、為替、投資信託、不動産など様々な種類がある。基本的に高いリターンが期待できるものほどリスクも高い。短期間で資産を増やすことを狙ってリスクの高い商品に多額の資金を投入すると、大きな損失を被ることもある。老後資金を増やすための資産運用が、逆に老後資金を食いつぶすことになってしまっては元も子もない。特に初心者の場合は身の丈にあった投資を行うことが重要だ。

身の丈にあった投資を行うには、まずは自分のリスク許容度を知り、どのくらいの期間でどれだけ資産を増やしたいかをクリアにすることが大切である。

リスク許容度によって取るべき運用手段は異なる

「リターンは低めでもリスクはできるだけとりたくない」のなら、ローリスク・ローリターンの金融商品を選ぶべきだろう。たとえば、個人向け国債は、数ある金融商品の中ではリスクは低め。元本保証されているわけではなく、中途解約すると元本割れする可能性があるものの、満期まで保有し、さらに日本がデフォルト(債務不履行)などの危機に陥っていなければ元本を割り込むことはまずない。ただし現在の金利水準では大きなリターンは期待できない。

「ある程度リスクをとってもリターン重視」なら、株式(現物株)投資という方法もある。元手資金の数十倍に資産を増やしたという例も珍しくないが、リスクも高い。株式投資を行う際には資金管理が重要となる。具体的には、投資資金が120万円なら一つの銘柄にすべてを投入するのではなく、複数の銘柄に分散投資を行ったほうがよい。また損失を膨らませないためには「何円以上下がったら損切りする」など、自分なりのルールを決めておくことも大切だ。

資産運用を全くしないこともリスクの一つ

ところで、「自分で投資対象を絞り込めない」「売買のタイミングをはかれない」「まずは少額から投資を行いたい」という人たちに人気なのが投資信託だ。株式と比べるとリスクもリターンも低め。1万円程度の少額から投資でき、投信積立を利用すれば毎月1000円程度からコツコツ投資することも可能だ。投信積立は一定の金額で継続購入することにより、基準価額が低い時には口数を多く購入でき、高い時には少なく購入することになるので、平均購入単価を低く抑えることができる。

このような手法はドルコスト平均法と呼ばれ、長期投資で威力を発揮する。投信のデメリットとしては、運用をプロに任せるだけにコストがかかることが挙げられる。また運用実績が上がらず基準価額が値下がりした場合には元本を割り込むこともある。

いずれの金融商品も多かれ少なかれリスクはある。しかし、適切な資産運用を怠ったために老後資金が不足するとなれば、それも大きなリスクであることは意識しておきたい。自分のリスク許容度にマッチした適切な資産運用で明るい老後を目指したい。