(写真=リフォーム産業新聞/日本ホームインスペクターズ協会 長嶋修理事長)
既存住宅の流通率が日本の6~7倍もある米国では、中古住宅の取引を促進するためにインスペクションやホームステージングといったサービスが普及している。
日本ホームインスペクターズ協会(東京都渋谷区)の長嶋修理事長は「中古流通の仕組みはアメリカに学ぶことが多い」と話す。海外市場に詳しい長嶋氏に日米の中古住宅流通の違いについて聞いた。
米国では建物診断が当たり前
◆米国では既存住宅の購入前に建物をインスペクションすることが多いですが、どれくらい実施されていますか。
米国ではほぼ100%インスペクションが行われています。日本では現状ほぼ実施されていません。米国では不動産仲介を担うエージェントと呼ばれる方が買い主や売り主に対して診断はいかがですかとお勧めするようになっており、普及が進んでいます。だいたい3人ほど紹介して、その中から選んでもらうことが多いですね。
また、米国にはインスペクターを育成する企業もあり、診断はもちろん、コミュニケーションやマーケティングの方法も含めて研修を行っています。このような企業も日本にありません。
◆実際、アメリカではどのようなインスペクションが行われているのでしょうか。
先月、ワシントン州のシアトルへ視察に行ってきました。印象的だったことの1つはスマホのアプリを使って診断報告書を作っていたことです。
インスペクターは建物を診断しながら各部分を撮影します。スマホを使ってその画像に建物の状態についてのコメントをつければ、現地で簡易な報告書が作れてしまうわけです。
なぜこのようなことをしているのかというと、インスペクターの方は1日2~3件の診断を行いますので、1件1件の調査結果を忘れてしまわないようにその場で診断書を作っておくわけです。簡易的な「プリインスペクション」であれば1日6件行う人もいますから。
診断の内容については、シアトルでは建物の構造躯体をそれほど気にしないと感じました。また一方で、設備の動作確認は入念に行っていると感じました。