「一時所得」か「雑所得」で異なる課税内容

一方、芥川賞の賞金については、所得税法第9条の規定には入っていないため、所得税の対象となる。ただし、所得の種類は「一時所得」になるため賞金全額が課税対象にならず、その半分が課税対象となる。ちなみに、全額が課税対象となる所得は「雑所得」という。課税対象になる所得が「一時所得」か「雑所得」で、かかる税金が半分近く違ってくるので、その区分というのが大変重要になるが、所得税法やその関連通達で、ある程度細かく規定されている。

その一例は以下の通りであるが、基本的には「継続的に得るものではなく、突発的に発生するもので、金額が多いもの」は一時所得で、「給与ではないし、金額は少ないが、毎年継続的に得るもの」は雑所得という区分になっている。

【一時所得に該当するもの】
・懸賞の賞金
・クイズ大会での優勝賞金
・競馬馬券の払戻金
・生命保険の解約返戻金(生前に自らの意思で解約して受け取るお金)など

【雑所得に該当するもの】
・国民年金、厚生年金等の公的年金
・大相撲の懸賞金
・講演料
・芸能人のギャラ(会社を通さない営業の場合)
・副業で得た収入(年間20万円以上)など

一時所得に挙げている「競馬馬券の払戻金」は今年、ニュースでも話題になった。大きな規模で競馬馬券を購入し、その結果得た多額の払戻金についての所得の種類の争いについて最高裁の判決が出た。そこでは、大規模かつ継続的な活動で得ている所得なので課税の公平性の観点から一時所得ではなく雑所得で考えるべきとし、はずれ馬券の購入費用は当たりを得るための必要経費と考えて所得から差し引いても良い、という結論になった。

以上のように「ご褒美」でもらうお金には、課税対象になるものとならないものがはっきりしているが、時流や経済情勢、トレンドや国民感情によっては微妙に区分が変わる側面もあるようだ。いざ自分がご褒美の賞金をもらう際には「税金の対象になるのか」「どういう所得になるのか」を考えていただくと、面白いと思う。

山野 周太郎・公認会計士
1977年生まれ。神戸商科大学卒業後、大手監査法人に入社。上場会社の監査、上場準備会社へのアドバイザリー業務に従事。その後大手銀行のコンサル部門での勤務を経て、現在は大阪の会計事務所で医療法人、一般法人の税務顧問、資金繰りコンサル、法人成りコンサルを担当。