枝廣憲氏
(写真=ZUU online編集部)

「日本のスマホゲームの伸びは150%」——。米国App Annieが発表した「2015年第1四半期アプリ利用レポート」(2015年1-3月の前年同期比)で、改めてスマホゲーム市場の成長性が高いことが分かった。

日頃スマホゲームをしないという人でも、いくつかのタイトルは知っているはずだ。TVCMも多いし、電車で隣に立った人がゲームをしているということは珍しくない。毎月新しいタイトルが登場し、成長性の高さからもうかがえるように、競争はますます激しくなっている。

そうしたジャンルで圧倒的なユーザー数を誇るのがKing(キング)だ。世界200カ国以上で無料ゲームアプリを提供、昨年2月にはNYSEへの上場を果たしている同社の『キャンディークラッシュ』は知らない人はいない存在だ。


MAUでガンホーを抜いて日本一に。米Activisionに買収されるとの報道

実は同社は今年8月、会社ごとのMAU(月1回以上活動のあった利用者数)ランキングで「パズル&ドラゴンズ」のガンホー・オンライン・エンターテインメントを抜いて1位となっている(LINEを除いた会社ごと)。昨年同月から1、2位が逆転した格好だ。

そのKingは「キャンディークラッシュ」のほかにも「バブルウィッチ」などパズル要素の高いゲームを出しているが、今夏初めて、シミュレーションゲーム「パラダイス・ベイ」をリリースしている。

こうした中で、11月上旬にはKingが買収されると報じられた。買収するのは「Call of Duty」や「World of Warcraft」などで知られる米ゲームソフト大手のActivision Blizzard。総額は約59億ドル(約7120億円)だ。この合意についてKing Japanは「モバイルゲーム事業を全世界に広める活動を推進してきたKingにとって大きなチャンス」とのコメントを発表している。

Kingが日本で達成したいこと、新ジャンルで目指しているものは何だろうか?King Japanの枝廣代表に聞いた(本インタビューはKing被買収の報道前に行われました)。


電通、gloopsを経てKingへ ゲーム会社2社で感じた違い

Kingは日本法人こそ2014年4月に立ち上がったばかりだが、本社の創業は2003年だ。Facebook上でどこよりも早く展開し始めたゲームが、前出の「キャンディークラッシュ」。それくらい業界では歴史と存在感がある。その後同タイトルのスマホアプリ版をはじめ新作ゲームも続々と追加。現在、グローバルでは200以上のオリジナルタイトル、日本国内では計9種のゲームを展開している。

日本法人代表取締役(General Manager)の枝廣憲氏は大学卒業後、新卒で電通に入社。営業職として大手化粧品メーカーや製薬会社などのマーケティングを担当していた。ベンチャー企業のプロモーションを手がけ、事業が拡大するところを目の当たりにしたことから、組織の成長に醍醐味を感じて転職することにし、ゲーム会社gloopsにヘッドハンティングされたという。

同社ではマーケティング本部長としてグローバルのマーケティングを担当。立ち上がって間もない同社でマーケティングの組織づくりを手がけた。当時既に自身もキャンディークラッシュをユーザーとして楽しんでいたが、米国サンフランシスコ駐在時に縁あって日本法人立ち上げに参画することになったそうだ。

枝廣氏が最後の面接でKing本社を訪れた際、King CEOのリカルド・ザッコーニ氏に「『日本の戦略は君だ』と言われたことをよく覚えている」と振り返る。当時Kingは既に欧米には進出していたが、アジアにはこれから出ようとしていた時期。枝廣氏が面接で語ったビジョンや人となりが、本社が思い描いていたに合致したのだろう。

経験したゲーム会社2社で感じた違いについて問うと、「gloopsではコアなゲームファン向けのゲームを作っていましたし、Kingではカジュアルで広くに向けたライトなゲームを出しています。ここまで両極端にタイプの違うゲームに関わった経験は、業界でも珍しいのではないでしょうか」と笑う。その両極端な2社での経験を通して、キングの優れているところをたずねると、「徹底してユーザーにとって分かりやすくすること、シンプルなUIへのこだわりです」との回答。少し胸を張ったように見えた。