大切にしているのは「一口大の輝き」

「共通していえることは」と続ける枝廣氏が挙げたのが、数多くタイトルを出しているKingが大切にしていることだった。

それは「バイト・サイズ・ブリリアンス(Bite-size Brilliance)をつくること」だという。「訳すなら“一口大の輝き”。ちょっとプレイして楽しいという感覚を大事にしているんです。ちょっとかじったときのふわっとした幸せ。無理にたくさん食べなくても、そっとそばにある存在であればいいんです」という。

Kingに限らず流行のゲームのほとんどがダウンロードは無料。ゲーム内課金でアイテムを買ってもらうというビジネスモデルだが、Kingのゲームではユーザーに対して、いたずらにアイテムを買うことを強いる雰囲気はない。「キャンディークラッシュ」はステージが1000以上あり、都度ステージが追加されるが最終ステージをクリアしたているプレイヤーの70%以上が無課金で達成していることからも分かる。

「パラダイス・ベイ」の反応はどうなのだろうか。ダウンロードはおおむね好調で、ランキングではキャンディークラッシュを一時上回ったという。ゲームのプレイヤーといえば男性が多いイメージだが、「実際にプレイヤーは女性が多いんです。特に30代ですね」とのことだ。

ユーザーの反応についてたずねると、「楽しみ方がいろいろあることに驚きました」という。「自分はいかに農作業や加工を効率化させるかという経営的な視点しかなかったのですが、中には自分の島をいかに好みの形にデコレーションするかという点を楽しんでいる人もいて、これにはちょっと驚きました」。


任天堂もスマホアプリを出す時代

ガンホーやミクシィといった会社を想定しつつ、「ライバルは?」と意地悪な質問をすると、「そういうのはないんです」と控えめな回答。大のゲーム好きという枝廣氏は、「任天堂が好きなんですよ」と続けた。

ゲーム会社の社長が別のゲーム会社を、気のてらいもなく「好き」ということに躊躇はないのだろうか? 真意をただしたが、「(任天堂は)万人に受け入れられる、楽しめるキャラクターづくりをされているじゃないですか。日本に限らず世界中にファンが多くて愛されていますよね。すごいじゃないですか」と素直な笑顔を見せた。

新タイトル含めた具体的な目標について尋ねると、数字は公表していないがと前置きし、「MAUはもっと増やしたいですね。ダウンロードも早く倍くらいにしたいと思っています」とのこと。さらに「目標はモバイルゲームをきちんとしたエンターテインメントにしたいということですね。Wiiを誰もが楽しんでいるように、誰もが気軽に楽しめるものだということを分かってもらいたいし、まずはそういうイメージを持ってもらえるように頑張りたいですね」と静かに、だがしっかりと力を込めて語った。

その任天堂は昨年、株主総会で株主からスマホゲームへ進出しないかと問われた。宮本茂専務はそこでこう答えている。「恐怖を感じているが、それが将来、すべてになってしまうとは考えていない」 「人と違うものを開発しながら驚きを提供するスタイルを続けていく」。

この発言からも分かるとおり、任天堂は長い間、スマホゲームへの進出を否定してきた。同社はWii Uをはじめとしたハードメーカーでもあることから、それも仕方なかったのかもしれない。

ただ同じ総会で別の取締役がスマートデバイス向けアプリを開発していると明かしたように、ついに進出することは決まっている。年内に配信予定だったスマホアプリについては、10月29日、来年3月に延期すると発表したばかりだが、スマホアプリにゲーム界の巨人・任天堂が参戦することで、ゲームファンの時間を奪い合う競争は激しくなるだろう。
だがそこでもKingは、ユーザーに無理を強いることのない自然なやり方で、一口大の輝きを感じさせ続けるのだろう。 (ZUU online 編集部)

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