株式・デリバティブ取り引き
(写真=Thinkstock/Getty Images)

金融庁は11月21日、平成28年度税制改正要望を発表した。その中で同庁が求めたのは、(1)家計の資産形成の支援と成長資金の供給拡大、(2)地域経済の活性化に資する中小企業の事業再生支援、(3)「国民金融センター」としての利便性の向上と活性化の3点だ。

その中でも、(1)の家計の資産形成の支援と成長資金の供給拡大では、「金融所得課税の一体化」が掲げられており、投資家にとってはとても気になるところなので、金融所得課税の一体化の内容とその是非を探りたい。


マイナンバーが損益通算の動きを促進

「金融所得課税の一体化」とはそもそも、金融商品ごとに異なっていた税制を一つに統一しようとするものだ。上場株式の譲渡益や配当、デリバティブの売買益、公社債等の利子や償還差益はもともと、それぞれ課税方式が違っていた。

そのため、なににどれだけ課税され、いくら支払わなければならないのかわかりにくくなってしまっていたのだ。

さらに、金融商品間で損益通算ができなかった。たとえば、ある金融商品で利益が出て、他方の金融商品で多額の損失が出た場合でも、利益が出た分については、税金を支払わなければならなかった。

他方で、アベノミクスで株式相場が活況を呈するとともに、「貯蓄から投資に」にをかけ声に、投資を促進し、経済の活性化を促してきていた。ただ、この流れをさらに推し進めるためには、投資家が投資しやすい環境を整備しなければならず、損益通算が不可欠なのである。

実はすでに、制度変更も始まっており、第1弾として、来年の1月から特定公社債等を株と同じ課税方式にして損益通算を可能にすることが決まっている。

この範囲をさらにデリバティブにも広げようというのが今回の税制改正要望となっている。その背景にあるのがマイナンバー制度の導入だ。従来は、金融機関による支払調書などを基に課税当局は金融所得を把握していたが、名寄せの作業は容易ではなく、課税関係を一体的に扱うことは難しかった。マイナンバー制度の導入で、この金融商品全体を把握することが簡単にできるようになるのだ。


投資家の半数弱が損益通算で「ヘッジ取引など検討」

デリバティブというと、難しくて、一般の投資家には無縁と思われている人もいるかもしれないが、先物やオプションだけでなくFXなどもデリバティブに含まれる。最近では現物株式だけでなく、FX取引を行う人も増えており、今回の要望が通り、損益通算が可能になれば、税制面でのメリットが大きい。

たとえば、FXで利益が出ても、株式で損失を出していれば、利益から損失を差し引くことができ、損失が利益を上回れば課税が発生せず、損失が利益を上回らなくても税金が安くなるからだ。

一方で、懸念が全くないわけではない。財務省は、オプション取引で損失を出す時期をコントロールし、租税回避される恐れがあることから、デリバティブの多様性と租税の公平をどのようにバランスさせるのか検討しているという。


90%の投資家は損益通算に賛成

このように、複数の金融商品に投資している場合には、損益通算できるということは大きなメリットになる。そのため、今回の改正要望は投資家一般に支持されるだろう。実際、証券会社が実施したアンケートによると、個人投資家の92.9%が、株式とデリバティブ取引などとの損益通算に賛成している。

また、株式とデリバティブ取引の損益通算が可能になった場合に、投資行動に変化があるかとの問いに対しては、50.7%は「変わらない」としているが、44.5%の人は、「ヘッジ取引などを検討する」とマネックス証券の調査委に対して投資からが回答している。

現物株しか取引しないという人については、今回の改正での影響はないため、あまり興味はないかもしれないが、投資ではリスクの分散が重要なので、将来的に他の金融取引をする可能性はあるはずだ。

いざ、他の金融商品に投資しようとした場合に税金の足かせがあるのとないのとでは大違いなので、今回の改正は万人にとって有効な改正だと言える。その意味で、少なくとも投資家サイドからは、株式とデリバティブの損益通算について反対する理由はないだろう。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
・2016年スタートの「金融所得課税の一体化」で何が変わるのか?
・投資家必見!IPO当選確率を上げる5つの方法
・日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
・1万円からトヨタやソフトバンクへの株式投資が可能?ミニ株取引とは
・「世界MBAランキング」国内1位 東大や京大、慶應ではなく新潟のあの大学