(写真=PIXTA)
退職金を手にした時の最悪の行動は、将来の生活設計がないまま投資を始めてしまうことだ。退職金が入ると金融機関からの勧誘も増える。しかし焦って金融商品を購入する必要は全くない。退職金は、老後の生活を支える大切な「虎の子」だけに、じっくりと作戦を練って使い方を考えたい。ただ、作戦を練っている間、普通預金として置いておくのも非効率だ。このように作戦を練っている間の待機先としてオススメなのが「退職金優遇定期預金」(以下、退職優遇定期)である。
「退職優遇定期」とはどのようなものか?
「退職優遇定期」は、多くの金融機関で退職金の受け皿として扱っている。退職金受取後3ヶ月〜1年以内の手続きを条件とし、預け入れ期間も3ヶ月〜1年以内と限定している金融機関がほとんどだが、3ヶ月の預入期間で金利は年率1%から2%以上と通常の定期預金と比較するとかなり優遇されている。
ただし、金利や預入額(500万円以上となっていることが多い)、預入期間等の商品内容は金融機関により異なる。今後の金融機関との付き合い方等も加味したうえで商品内容を細かくチェックして検討したい。
通常の定期預金より最大で20倍もお得
ちなみに「退職優遇定期」の利用に際し、通常次のような条件を設定している金融機関が少なくない
・「退職所得の源泉徴収票」や通帳等の退職金受取を確認できる書類の提出
・退職金受取の後1年以内に預け入れること
・資産運用に関するアンケートへの回答
主な条件は上記の通りであるが、金融機関・商品により利用条件の詳細は異なるため、日頃から利用している金融機関に気軽に相談してみよう。
仮に、1,000万円を「退職優遇定期」の3ヶ月(金利:年率2.00% ※税引後1.593%)で活用し、満期後は通常の定期預金(年率0.025%)に9ヶ月預け入れた場合の税引後受取利息は4万799円となる計算だ。
一方、通常の定期預金(同)に1,000万円を1年間預けたときの税引後受取利息は1,993円となる。3ヶ月の短期とはいえ優遇金利を享受することで、通常の定期預金で運用した場合の実に20倍の利息を受取れるのは大きな魅力だ。本格的な運用開始の待機期間とはいえ、通常の定期預金で眠らせておくのはもったいないと言える。
「退職優遇定期」を利用する際の注意点
ところで、実際に「退職優遇定期」を活用する際には、次の2点に注意する必要がある。
①期間限定である
「退職優遇定期」の魅力は、何といっても通常の定期預金とは比べものにならない高い金利設定だ。しかし、優遇金利期間が限定されていることは認識しておきたい。多くの「退職優遇定期」において、金利1%以上のものは、預入期間が「3ヶ月」又は「6ヶ月」と優遇金利はいつまでも続かない仕組みになっている。
②金利が金融機関によって異なる
金融期間によっては、たとえば「退職優遇定期」と投資信託とをセットで申込むと、さらに高金利となり「10%の優遇金利!」といったプランもある。定期の高金利に目を奪われ、投資商品の仕組みや内容を理解しないまま、いつの間にか運用を開始することのないように注意したい。目先の高金利に惑わされない冷静な判断力を持つ必要がある。
金利だけではなく「時間」も有効活用
冒頭でも述べた通り、退職金は老後の生活を支える大切な「虎の子」である。それだけに、じっくりと作戦を練って使い方を吟味したいところであるが、今回紹介した「退職優遇定期」は、あくまで作戦を立てるまでの一時的な待機先と考えたい。重要なのは「退職優遇定期」に預けている時間を有効活用して、自分にとって最適な作戦(マネープラン)を立てることにあるからだ。
では、最適なマネープランとはどのようなものなのか。それぞれが思い描く「理想の人生設計ビジョン」により答えは当然異なるが、いずれにしても退職後のマネープランは安定性を重視することが大切といえる。
マネープランは100人100様
たとえば、退職金受取時に住宅ローンの残債がある場合、資産運用よりも繰上げ返済を優先し金利負担額を圧縮させることが有効的かもしれない。また、住宅ローンの残債があり、子どもの教育資金などのまとまった資金が必要なケースでは、繰上げ返済は後回しと判断することも考えられる。さらには退職金以外にある程度の預貯金があり、退職金にはしばらく手を付ける必要がないため運用に回すのが効果的というケースもあるだろう。
退職金を有効に使うためには、まずは焦せらないことだ。マネープランは100人100様。「退職優遇定期」に資金を預ける1年ほどの時間を活用して、自分に最適なマネープランをじっくりと検討するのが基本といえる。この時間を利用して投資について勉強するのも良いだろう。また、考えに行き詰ったときは、最適なマネープランを一緒になって考えてくれる専門家であるファイナンシャルプランナーに相談してみるものも有効だ。「退職優遇定期」は魅力的であることは間違いないが、金利だけでなく時間も有効に活用することを心がけたい。