マイナンバー
(写真=PIXTA)

来年1月より運用が始まるマイナンバー。2015年12月現在でまだ通知を受け取っていない人もいる。通知が届かないこと人の多くは不安を感じているようだが、届かない場合具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。

マイナンバー開始。1月から何が変わるのか?

まず、マイナンバーの基本的な所を押えておこう。マイナンバーとは住民票を基礎に1人1ナンバー作成されるため、新生児から(住民票がある)外国人にまで幅広く交付される。マイナンバーの意義は以下の3つとされる。

1.公平・公正な社会の実現
所得を把握することで適正・公平な課税を行うほか、年金未払い・生活保護の不正受給などを防止

2.行政の効率化
平時における行政手続きの簡素化、ならびに災害時における行政支援の迅速化

3.国民の利便性の向上
年金・福祉・社会保障等の申請が楽に

やや抽象的な指針に見えるが、実際の生活ではどのような変化があるのか。実は、当面大きな変化はない。マイナンバーの導入で「所得と資産が筒抜けになる」と恐れている人もいるが、銀行預金での利用は2018年からと予定されており、所得はともかく、すぐさま預金が明らかになるようなことはない。

マイナンバーを元にした個人番号カードは公的な身分証明書として使用できる。公・民双方で万能だと思われがちだが、あくまで行政の利用に限られる。将来的には証券会社・公共料金・運転免許証など、民間企業との連携を開始するとされているが、今現在は行政関連の手続き・申請時に便利かつ間違いがなくなる、と認識しておけばいい。

マイナンバーが届かないときは?

自分のマイナンバーが分からないからといってすぐに困ることはない。当面、マイナンバーの利用は「社会保障」「税」「災害対策」の3分野限定だからだ。

会社員にとって「社会保障」と「税」はほぼ同意義といっていいだろう。社会保障も納税も基本的には会社が申請と納税を代行してくれるからだ。会社が会社員に代わって申請する書類は源泉徴収票・健康保険・厚生年金保険等多岐に渡るが、2016年1月1日からすぐに必要になるわけではない。あくまで、各種書類を各行政庁に提出する際にマイナンバーを取得すればいい。

個人事業主の場合も「提出時までにマイナンバーがあればいい」という基本は同じだ。例えば納税なら、3月の確定申告時にあればいいということになる。

災害対策はいざという時、確実・迅速な対応を行うためのもの(例えば災害時の医療現場で診療情報の共有など)。マイナンバーがなくては災害援助が受けられないという性質のものではない。それでも配達状況が気になる人は地方公共団体情報システム機構による差出状況を確認するとよい。

「受け取らない」という選択のデメリット

マイナンバーを受けらないという選択は可能だ。簡易郵便のため、受け取り拒否という積極的な手段を用いなくとも、居留守を使えば受取ることはない。しかし「受け取り拒否=マイナンバー削除」ではない。そのため、受け取らないことによるメリットは単なる「現状維持」といっていいだろう。

一方デメリットはどうか。もし会社に提出拒否としても罰則があるわけではない。マイナンバーに関する罰則は「情報漏えい」「不正使用」「虚偽報告」など、使用者側を戒めるためのもばかりで、個人の提出拒否に関する罰則は設けられていない。

しかし会社としては各種行政書類のためにマイナンバーを取得しなければならない。企業側の責任で無いことを証明するためにも、提出指導、取得の必要性・重要性を説くなどの時間を割くことになるだろう。それでも提出拒否をした場合は、提出先の行政機関・税務署などに経過を報告し指示を仰ぐこととなる。マイナンバーの提出を拒否すると企業は拒否者のためにそれだけの労力を割かねばならず、拒否が喜ばれることはまずないだろう。

政府は企業に対し、マイナンバーの取り扱いをまとめたガイドラインやwebでのQ&Aなど対応を充実させている。ビジネスパーソンは年が明ければ順次職場でのマイナンバー提出を求められるだろう。その時「受け取っていない」では済まされない。

マイナンバーがないからといって、直ちに健康保険・厚生年金や生活保護など社会保障がストップするとは考えにくい(将来的には分からないが)。それより拒否によって会社に嫌がられたり、煙たがられるといった事態の方がはるかに現実的に堪えるのではないだろうか。

もし受け取りを拒否したら…後で申請する方法

なお、もし受け取りを拒否してしまった場合に、後日受け取ることは当然可能である。そもそも、マイナンバーは転送されないので、配達開始時の2015年10月前後に引っ越しをした、現住所と住民票の住所が異なっているなどの場合は受け取りたくとも受け取れない。

引越しにより受け取れなかった場合は原則として、新住所地の市区町村での交付手続きが必要である。受け取り拒否もしくは不在により受け取れなかった場合でも、再配達の申込み(日本郵便株式会社)により受け取りは可能となる。

マイナンバー制度に疑問を感じている人も多いと推測する。しかしマイナンバーの受け取り拒否と、マイナンバー制の拒否を混同してはならない。残念ながら、受け取りを拒否しても何の解決にもならない。始まってしまった以上、制度と向き合い、問題があれば正面から声を上げればよいのである。

横山 晴美(よこやま はるみ)    ライフプラン応援事務所代表
2011年にFP資格取得。2013年 ライフプラン応援事務所 を立ち上げ独立FPとして活動。住宅・子育て・老後などの「お金の問題」解決を目指し、相談業務・マネーセミナー等を行っている。