介護離職

(写真=Thinkstock/Getty Images)

最近、介護のために仕事を辞める人が増えている。政府も「介護離職ゼロ」を掲げて対策推進に乗り出ししている。しかしながら、ソニー生命が2013年に実施した調査では「自分の親の介護への備えについて、約6割は『準備できていない』と回答」しているとの結果もある。突然やってくる「介護」に慌てないよう、在宅介護を選択せざるを得ない実態とともに、在職しながら介護するための制度など、「在職在宅介護」に焦点をあてて紹介したい。

在宅介護しかない現状

「介護」は、配偶者、両親など高齢の家族がいればいつか必ずやってくる。高齢化社会に突入した現在では40代以上の90%が直面すると言われている。そのような状況を示しているのは費用負担の少ない公営の特別養護老人ホーム(特養)が52万人の入所待ちの状況(2013年度厚生労働省発表)となっていることだ。

特養の施設数は増えているにも関わらず、待機者数はどんどん増えて追いつかない状態であることは、施設数の問題だけでなく介護職員の数が不足しているため「病床が開いているのに受け入れられない」こともあり、待機者数の増加に歯止めがかからない一因となっている。

一方、民間の「有料老人ホーム」では同じく施設数は増えているものの、入所可能な施設は費用負担が高額であきらめざるを得ない介護者も多い。またとりあえず入所させたものの費用負担が重くて支払いが継続できないため退所せざるを得ない要介護者も多いのが実態のようだ。

そのような場合、在宅介護となってしまうのだが、在宅介護となれば仕事を続けることが困難となり離職する人も多くなってしまう。厚労省調査によれば2012年には介護離職者が1年間で約6.6万人いた。それが意に反する離職なのであれば、今後在宅介護がますます増加していくことが考えられる今、大きな問題として社会全体で考えることが必要となってくる。

在宅介護の費用はどのくらいかかるのか

家計経済研究所の2011年10月の調査によると、在宅介護にかかる要介護高齢者のための支出は、介護サービス利用料月額平均3万7000円、サービス以外の支出は月額平均3万2000円、合計月額平均6万9000円となっており、重篤な認知症によるケースでは月額平均13万円となっている。

要介護者の年金額がいくらあるのか把握することが重要だが、年金額については少子高齢化により、将来減額されていくことは十分予想され、今後在宅介護による費用負担の多くを介護者が担うことになってしまうことは間違いない。ともすれば、介護者が仕事を辞めてしまうのは「金銭的に非常に危険な状況に陥る」ことだといえる。

知っておきたい公的支援制度

高齢家族を介護する場合、介護保険の他に次のような公的支援制度があることを知ってきたい。

(1)介護休業
会社員が「要介護状態」の家族を介護する場合、育児・介護休業法に基づいて「介護休業」を取ることができる。給与の支払義務はないので会社によっては有給休暇を使わない限り給与は全く支払われない可能性もあるので注意が必要だ。

(2)介護休業給付金
上記の介護休業を取得したことによる給与の減額分の差額については、雇用保険の一般被保険者であれば「介護休業給付金」を受けることができる。給付額は休業開始前の給与水準の40%限度となり、給与分と合わせて80%までの給付となっている。ただし、同一の対象家族について受給できる日数は通算93日までとなっており、介護という終わりの見えないものの実情に添わないという意見もあるが、介護と仕事を両立する体制を整えるために、市町村や地域包括センター、担当ケアマネージャーなどとの相談調整期間と考えて有効に利用するとよいだろう。

(3)その他の制度
そのほか「介護休暇」「勤務時間の短縮等の措置」「法定時間外労働の制限」「深夜業の制限」など育児・介護休業法により会社は労働者の権利として認めなければならないことになっている制度もある。在宅介護=退職ではなく、これらの制度をうまく活用して、「在職在宅介護」ができるための方法を積極的に探していきたい。

介護問題を「自分のこと」として捉える

超高齢化社会となるこれから、いつ自分の身に起こるかわからない「介護」。そして、施設入所困難である現在では「在宅介護」は避けて通れない切実な問題となっている。そんな中で「在職在宅介護」が普通となるように、今後、制度の充実がますます求められていくだろう。

しかし、それよりも先に、社会全体としてこの問題を考え、介護休業や介護休暇を取り易くすることや介護終了後に職場復帰しやすくなるような職場環境を整えることが大切ではないだろうか。そのためには何より一緒に仕事をする仕事仲間への配慮が必要だ。権利の主張をするだけでは職場の理解は得られない。普段からの仕事に対する姿勢や同僚・後輩への気遣いなどはとても大切なことだろう。

問題に直面している人もそうでない人も、一人一人が自分ごととしてリアルに考え、「介護離職しない、させない」ためにはどうすればいいのかを考えることが一番重要なことではないだろうか。

小野みゆき 中高年女性のお金のホームドクター・社会保険労務士・CFP
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。 FP Cafe 登録FP。

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