個人向け金融サービスの2つのスタイル

まず、そもそも論になるのですが、リテール(個人顧客)向け金融サービスの世界は、大きく2つに分類できるといわれています。

一つは、あらかじめいくつかの顧客ニーズを想定し、そのニーズを満たす為の金融商品を複数設計して、多種多様な金融商品を勧誘販売する、金融商品販売型のビジネスモデル。もう一つが、顧客から運用資産を預かり、顧客の運用方針やニーズを踏まえて、最適なポートフォリを提案・実行する、金融コンサルティング型ビジネスモデル。

この2つはサービス内容の他に、収益モデルも異なります。金融商品販売型は、販売した金融商品の売買時に手数料(コミッション)を金融機関側が受け取る仕組みです。一方金融コンサルティング型は、定額のアドバイスフィーや、顧客から預かる運用資産の残高に比例したお金を受け取る仕組みが一般的です。

そして日本では、伝統的に前者の金融商品販売型が主流でした。そしてアメリカでは(リーマンショック以後特に)、後者の金融コンサルティング型が主流であると言われています。

どちらの仕組みにも長所短所はありますが、金融商品販売型の場合、売買時に手数料が発生するため、金融機関側に本来不必要な金融商品の回転(売り買いの繰り返し)や、手数料の高い金融商品を販売する動機が、強く生じてしまう問題があると言われています。

金融商品販売型が中心の日本の金融ビジネス

現状日本のリテール金融の世界では、金融商品を作る証券会社や保険会社などの金融機関側の力が強く、金融商品販売型であると言われています。
顧客と金融機関の接点も、金融機関の営業マンやその代理店である事が一般的です。そして金融コンサルティングサービスは、余り根付いているとは言えません。
その理由ですが、今まではその必要性がなかったことと、日本人の習性に上手くマッチさせることが出来なかったためと言われています。

まず必要性について。
戦後の日本はバブル崩壊後の不況まで途中調整を挟みつつも、安定した経済成長を続けてきました。そのため、銀行預金の利率も高く、また不動産や株式も上昇基調、年金制度も信頼できると言う状況が長く続きます。また人生の選択肢も今より限られ、一度就職をしたらその会社を辞めずに尽くし続けると言う意識が強くありました。
この様な環境のなかで、高度な金融のコンサルティングを必要としている個人は、とても少なかったと考えられます。

そしてもう一つは習性について。
バブル崩壊後の、金融サービスに対する規制緩和が進んだ90年代後半以降、外資系金融機関による、コンサルティング型の金融サービスが日本に多く上陸してきました。しかし苦戦が続き、現在も余り根付いたとは言えない状況です。
コンサルティング型サービスは、その前提条件として、顧客の金融資産の内容を全面的に開示して頂く必要があります。そして相手が外資系金融機関という事もあったのでしょうが、この資産の開示が高いハードルとなり、サービスの入り口にたつ事も難しい。そんなケースが多かったそうです。